コロナ禍による被害は、台風や地震や豪雨などによる自然災害の被災者と同じ

コロナ禍による被害は、台風や地震や豪雨などによる自然災害の被災者と同じ

コロナ禍による被害は「台風や地震や豪雨などによる自然災害の被災者と同じ」と私は考えている。自然災害の被災者は、それまでは自らの力で暮らしていたのだが、自然の猛威の中でやむなく住居喪失者となった。こうした人たちがいたら国や行政は、その人がどういう状況であっても必ず救済と生活支援を行うはずだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

仕事も失い、貯金もない非正規雇用者

拙著『ボトム・オブ・ジャパン 日本のどん底』では、ネットカフェ難民が行き場を失ってホームレスになったり、無料宿泊所という名の搾取ビジネスに取り込まれたりする流れを書いたが、どん底(ボトム)に落ちていくと這い上がるのが難しい地獄の世界が待っている。

中国発コロナウイルスは、まだ収まっていない。

コロナショックによって観光業・宿泊業・飲食業・製造業などが3月に入って急激に苦境に落ちていく流れに入ると、まず非正規雇用者が雇い止めや強制的な休業に追い込まれるようになった。

ホームレス支援のNPO団体によると、炊き出しに並ぶホームレスは3月から増え始めて、4月や5月には急増していたことが確認されている。政府は緊急事態宣言を発令したのだが、その期間は4月7日から5月31日にまで及んだ。

この緊急事態宣言の期間、仕事も失い、貯金もない非正規雇用者たちはどうなっていたのか。

1. 少ない貯金で食いつないだ。
2. 借金で食いつないだ。
3. ホームレスになった。
4. 生活保護を申請した。
5. 政府の支援制度を利用した。
6. 実家や友人に頼った。
7. 何とか仕事を見つけて細々と暮らした。
8. 自殺。

非正規雇用者の就く「日雇い」や「短期」や「派遣」などの仕事は、非常に不安定である。

企業は「景気の調整弁」として彼らを雇うので景気が悪化したら遠慮容赦なく切り捨てる。もともと短期の仕事などは賃金が安いので、こうした仕事に長く就いている人は、どうしても自力で這い上がることができない。

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すべての行政のサービスは住所に紐付く

4月から5月の自粛期間中は政府がホテルを借り上げて、苦境に落ちた非正規雇用者を一時的に住まわせたのだが、ほとんどの場合は7月1日に期限がきて政府の借り上げホテルを退所せざるを得なくなった。

しかし、7月になってもコロナはまったく収束しておらず、街の景気も戻っていなかった。

その間、政府は特別定額給付金をひとり10万円出したのだが、皮肉なことにこの特別定額給付金を最も必要とするネットカフェ難民やホームレスだけがそれを受け取ることができなかった。

なぜなら、特別定額給付金をを受け取るためには、住民基本台帳に載っていることが前提となっているからだ。住所がない人間は受け取れないのである。すべての行政のサービスは住所に紐付く。そのため、住居喪失者には届かなかった。

7月以後から自殺もじわじわと増えている。6月までは何とかやりくりしていた人たちの中、いよいよ力尽きるようになってきたのが7月からだったのだ。

警察庁の最新統計によると、全国の自殺者数は9月に1805人となって、前年同月比8.6%増だった。7月から3カ月連続で増えていた。女性の自殺者の増加率は特に顕著に目立った。

7月16%増
8月40%増
9月28%増

非正規雇用者は女性が多い。中国発コロナウイルスは「女性」を追い込んだということが統計からも見て取れる。

夜の飲食店でもクラスターが発生して、独自の休業をせざるを得ない状況になっていたので、キャバクラやクラブ等に勤めている女性たち、あるいは風俗に勤めている女性たちも追い込まれた。

彼女たちはどうなったのか。昼職に戻った女性たちもいれば、貯金で何とかする女性もいた。あるいは、別の世界に足を踏み入れた女性もいる。(ブラックアジア:風俗で稼げなくなった海千山千の女たちの次の戦場は「パパ活アプリ」だった

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生活困窮者を福祉事務所が追い返す

自殺に至らないまでも、仕事も貯金も失って平穏でいられる人はどこにもいない。今まで少ない給料でかろうじて生活していた人の中には、家賃が払えなくなったという人もいるし、家を失いそうになってしまっている人もいる。

精神的な苦しみの中で今もどん底(ボトム)を這い回っている人たちは大勢いる。

西日本新聞は2020年8月に福岡県で起きた事件を紹介している。勤務先のうどん店の店長にクビを告げられ、家賃が払えなくなり、福岡市の公園で寝泊まりし、「食べ物を下さい」と紙に書いて人に恵んでもらうような生活をしていた30代の女性の話だ。

彼女は最後に、天神の真珠販売店に入って「お金を出してください、切りますよ」とカッターナイフを突きつけて逮捕されるという結果になった。(西日本新聞:「食べ物ください」コロナで解雇、路上生活の末…恐喝未遂の女に刑猶予

政府は特別給付金10万円を配ったが、たかが10万円でコロナ禍の苦境に対応できる人はどこにもいない。持続化給付金についても、こうした手続きに疎い人たちは蚊帳の外に置かれたままだ。

真珠販売店の女性店員にカッターナイフを突きつけた30歳の女性も、政府の救済措置を使わなかった。生活保護を申請することもなかった。

ところでこの生活保護だが、申請者の親族に扶養能力がないのかを調べる「扶養照会」という手続きがある。

分かりやすく言うと、生活保護を申請したいという人が来たら、その親兄弟や親戚に電話して「まずは身内が助けられないだろうか?」と役所が問うのである。

親兄弟や親戚と元々疎遠だった人にとって、自分の一族全員に「落伍者」「負け犬」「怠け者」みたいに思われるわけでそれは恥ずかしいことでもある。それがイヤで生活保護を受けないという人も多い。

福祉窓口に来た生活困窮者を福祉事務所が追い返す行為は「水際作戦」と呼ばれている。「扶養照会」という手続きも、水際作戦のひとつなのかもしれない。

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地獄はまだ続いている

生活が立ちゆかなくなり、貯金も何もかも失い、自分では生活を立て直すことができなくなってしまった人たちにとって福祉事務所は最後の砦となる。

しかし、福祉事務所が水際作戦で「もっと頑張って仕事を探せるでしょう」「親兄弟や親戚に助けてもらったら?」と言って追い出していると、最も弱い人たちは途方に暮れるしかない。

住居喪失者であると同時に、うまく生活保護を受けられなかった人は、ホームレスに落ちるしかない状況がここにある。社会から孤立し、困窮し、空腹に追われ、絶望しかない。だから、自殺を選択する人も出てくるのである。

ネットカフェ難民はネットカフェにも泊まることができなくなったら、いったいどこに消えてしまうのか。3月、私は何人かのネットカフェ難民と知り合っていたのだが、すでに知り合った全員が消息不明になっている。

彼らが仕事を失って蒼白になっていたのが3月だった。それから彼らがどこに行ってどのように生きているのかはまったく分からない。

コロナ禍による被害は「台風や地震や豪雨などによる自然災害の被災者と同じ」と私は考えている。自然災害の被災者は、それまでは自らの力で暮らしていたのだが、自然の猛威の中でやむなく住居喪失者となった。

こうした人たちがいたら国や行政は、その人がどういう状況であっても必ず救済と生活支援を行うはずだ。コロナ禍によって何もかも失ってしまった人たちの救済も、本来はそうではないかと考えている。

コロナ禍はまだ収束していない。ファイザーやモデルナのワクチン開発が着実に進んでいるのは確かなのだが、これが一般に流通するようになるのはもう少し時間がかかるだろう。

それまでは、人々は意識的にも無意識的にも行動を制限する。それがひいては企業の収益を悪化させて雇用に影響していく。これから年末になり、ますます追い込まれてしまう人たちも出てくるはずだ。

地獄はまだ続いている。政府は苦境に落ちたどん底(ボトム)の人々に目を向けることはあるだろうか……。

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