iPhoneのOSが「シンプルさ」よりも「複雑さ」が目立つようになってきた

iPhoneのOSが「シンプルさ」よりも「複雑さ」が目立つようになってきた

システムは成功すればするほど肥大化し、複雑化していく。今まで多くのハードウェア、ソフトウェア、OS、システムはどれもそうだった。いったん軌道に乗ると、どんどん機能が付与されていき、巨大化していく。そして、ありとあらゆる機能を飲み込んで、複雑化していく。しかし、物事には限度がある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「複雑化のワナ」「巨大化の泥沼」

2020年9月17日。アップルはiPhoneで動くOS「iOS14」を発表している。このOSはさらに高機能化・高性能化しており、iPhoneをハードに使いこなすヘビーユーザーの多くを喜ばせている。

しかし、このOSを使ってみると、非常に多くの機能が大量に詰め込まれて便利になった反面、アップル自身もまた「避けることができない大きなワナ」に落ちていきつつあるのではないかという懸念を抱く。

どういうことか。それは「複雑化のワナ」である。

ガジェットの追加、管理画面の高機能化、Appライブラリ、背面タップ、増えるアプリ……。進化し続けるiPhoneとiOSもまた「複雑化のワナ」「巨大化の泥沼」に落ちていこうとしているのではないか。

最初はシンプルで分かりやすく使いやすいシステムは、それが成功して多くの人々に使われるようにあると、人々が要求する様々な機能を取り入れて、どんどん発展し、大きくなっていく。

システムは成功すればするほど肥大化し、複雑化していく。

今まで多くのハードウェア、ソフトウェア、OS、システムはどれもそうだった。いったん軌道に乗ると、どんどん機能が付与されていき、巨大化していく。そして、ありとあらゆる機能を飲み込んで、複雑化していく。

こういったものが膨れあがっていく時というのは、成功しているときである。成功しているときは、成功を極大化させるために、多くの機能を取り込んでひたすら膨張することが善になる。

「iOS14」は日頃からiPhoneを使い倒しているヘビーユーザーにとっては非常によく考えられたOSであると思う。しかし、これはもう「誰でもすぐに使い方が分かるもの」ではなくなってしまっている。「複雑化のワナ」「巨大化の泥沼」がこのOSを覆い尽くそうとしている。

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その巨大さゆえに身動きできなくなる

ヘビーユーザーは朝から晩まで複雑化したシステムに接しているので、特にそれが複雑化したとも難しくなったとも思わない。むしろ、いろんな機能が付いていないことの方に不満を感じる。

誰かが「複雑化して使えない」と言ったら、それを使いこなせていることに優越感を覚えて、そこに価値を見出す。複雑化は専門家を生み出し、専門家はシンプルにあることを望まない。

メーカーも競争に負けないために、ありったけの付加価値を付けたいと願う。今のアップルはまさにそのような姿になっている。

それが成功に次ぐ成功を生み出しているとき、システムの巨大化は止めることができず、巨大化する動きが暴走していく。

しかし、巨大化したものは、ある時点でその巨大さゆえに身動きできなくなる。巨大化したすべての存在には限度がある。システムだけではない。これは組織にも言えることだ。すべての存在には限度というものがあるのだ。

複雑化すると言っても、複雑化には限度がある。その限度まで成長すると、それ以降は巨大さと複雑さ故に自壊が始まる。マイクロソフトのウィンドウズも、巨大化と複雑化に足を取られてスマートフォンの時代に乗り遅れた。

世の中は変わる。時代は変わる。ある日、突如として何らかのパラダイムシフトが起きて、新しい流れに変わる。そんなとき、巨大化・複雑化した組織やシステムはうまく方向転換することができず、やがて時代に取り残されてしまう。

方向転換しようにも、あまりにも図体が大きくなりすぎて曲がれない。うまく時代に合わせることができない。自らの巨大さが致命傷になってしまうのだ。

今のiPhoneのシステムがそうだとは言わない。しかし、どうやら徐々にそのような方向に向かいつつあるのではないかという片鱗が複雑化した「iOS14」にも見られるようになっているのが不気味だ。

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システムは5つの問題で自壊していく

大きく成長しすぎたシステムは、次の5つの問題で自壊していく。

1. 複雑化して手に負えなくなる。
2. 巨大化して手に負えなくなる。
3. 老朽化して手に負えなくなる。
4. しがらみで手に負えなくなる。
5. コスト上昇で手に負えなくなる。

複雑化したものは、その複雑さゆえに全体を把握することができず、一箇所に手を加えたら予期せぬ部分で問題が発生したりする。細部が見えないので、何がどうつながっているのか分からず、悪影響が予測できなくなる。

iPhoneのシステムは、巨大化の弊害で苦しむところにまで至っていない。今はまだ高機能化することをユーザーも望んでおり、「難し過ぎて使えない。こんなに多くの機能も要らない。もっとシンプルなシステムが欲しい」と叫ぶ人は少ない。

しかし、ある時点でアップルもユーザーも、ふと「行き過ぎた」と思う時が来て、今度は逆に「もっとシンプルで軽くて使いやすいものが欲しい」と思うようになる。そうなった時、高度に複雑化したシステムはシンプルに対応できない。

システムを複雑化することは簡単なのだが、システムをシンプル化するのは逆に想像以上に難しい。長らくシステムが使われると対応機種も増えるわけで、それぞれに対応させなければならない。

また、今まで使えていた機能がなくなるとヘビーユーザーは怒る。これまで使えていた機能が使えなくなるというのはシステムにとっては欠陥なのである。進化は許されても退化は許されない。

その前に、システムのどこかを変えようと思っても、長く使われていたシステムは内部コードが非常に複雑化しているので、どこに影響が出るのか分からない。そのため、こうしたシステムはある時点で必ず「現状維持」がモットーになる。

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シンプルさよりも複雑さが際立つように

iPhoneの新しいOS「iOS14」は、ライバルのAndroidに対抗するために、それに似せた機能を大量に盛り込んでいる。そして、それを超えるためにiPhone独自の機能も拡張させている。

それぞれの機能は「便利」である。アップルならではのイノベーションが満載だ。アップルユーザーは狂喜してそれを迎えるだろう。

しかし、そろそろシステムの高機能化に脱落していく人たちが増えていくほどの複雑化がシステムに取り入れられているように見える。着実な進化が、今度は逆に「複雑化のワナ」「巨大化の泥沼」を生み出すフェーズに入ったのではないかという一抹の懸念を抱かせる。

使い方が直感的ではなくなって、いろんなことを「学習」しないと使えないレベルにまで達している。

人によっては、自分の使っているiPhoneの電話番号をどこで確認したらいいのかすらも分からないような状態となっている。

すでにホーム画面の管理ができなくなってしまっている人もいるし、AirDropだの、ガジェットだの、ミラーリングだの、ペアリングだの、説明されても意味をよく掌握できない人もいる。そこに、大量のアプリの使い方が重なる。

アップルは世界最強の企業であり、スマートフォンという市場を作り出し、制覇し、世の中を変えた企業である。スマートフォンを軸にしてサービス分野にも凄まじく大きな影響力を持つようになり、まったく弱点がないように見える。

アップルは、これからもさらに私たちを驚かせるようなイノベーションを生み出すだろう。しかし、高付加価値を追い求めるがゆえに、どんどん「複雑化のワナ」「巨大化の泥沼」に向かっているように思える。シンプルさよりも複雑さが際立つようになってきている。

特に「iOS14」はそうした懸念を抱かせるシステムのように見えた。これらのOSはアップルにとって企業生命を左右するものだ。「複雑化のワナ」はまだ問題ないのか、それとも深刻化していくのか、よく見極めていきたい。

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