バフェットが購入した日本の商社株5社。私も久しぶりに日本の株式を買った

バフェットが購入した日本の商社株5社。私も久しぶりに日本の株式を買った

バフェットはアメリカ株式市場の「浮ついた動き」に参加していない。株価の動きだけを見て売った買ったを繰り返す投機に背を向けて、「良い会社を安い値段で買い長期で保有する」という伝統的なバリュー投資をじっくりと進めている。そのバフェットだが、2020年8月30日に日本の5つの商社株を保有したと報道された。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

資産価値から見て株価が安く放置

2020年8月30日。ウォーレン・バフェットが、日本の5つの商社株を保有したと報道されて大きな話題になっている。バフェットが保有することになったのは、すべて商社株で具体的には以下の銘柄だ。

・三菱商事(8058)
・伊藤忠(8001)
・三井物産(8031)
・住友商事(8053)
・丸紅(8002)

バフェットがこれらの企業に費やした投資資金は約6350億円規模であり、バークシャーの資産から見ると小さなものだが、投資額から見ると決して小さなものではない。

なぜ、バフェットはこれらの銘柄に着目したのか。商社が持つビジネスの特性に関心を持ったのは違いない。

商社のビジネスは非常に多角化されている。たとえば、「資源のない日本に資源を持ってくる」ことや「大規模なビジネスを国外で展開する」ことや、「国内の有力な企業を買収して付加価値を付けて売却する」等々のビジネスを同時並行で行っている。

商社は日本を代表する「多国籍企業」なのである。しかし、バフェットが投資を決意した背景にあるのは、「資産価値から見て株価が安く放置されているから」に尽きるのだろう。

PBR(株価純資産倍率)から見ると、伊藤忠以外は1倍以下であり、PER(株価収益率)で見ても10倍から20倍の間であり、誰がどう見ても安値で放置されているバリュー株だ。

バフェットは世界最強の「バリュー株投資家」であり、常に「良い企業を安いところで買って長期保有する」というスタンスを崩さない。今回の投資はまさにその「教科書通りのバリュー投資」であると言える。

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買われ過ぎが正当化されているNY株式市場

今、アメリカの株式市場はS&P500のチャートを見ても分かる通り、絶好調だ。3月のコロナショックをとっくに取り戻して、さらに上昇していこうとしている局面だ。アメリカの株式市場に投資している人間は、ほぼ全員が株価上昇の恩恵を受けている。

投資家は一般の人たちに恨まれるので誰も大声で言わないが、コロナショックで実は「儲かっている」のである。

株式を持たない人間は実体経済の悪化に巻き込まれ、全員が地獄に突き落とされてもがいている。しかし投資家は、とっくに損を取り戻して、さらに利益まで得て高笑いしている。

ETF【VTI】のような「株式市場全体を買う」だけのETFですらも値を戻して定期定額積立投資をしている人間に大きな恩恵をもたらしている。

もっとも、現在の株式市場の上昇は一部のハイテク株・話題企業に人気が集中していて「いびつな株価上昇」となっているのは、やや危険な兆候だ。

たとえば、イーロン・マスクが率いるテスラなどを見るとPERは「1000倍超え」の以上事態となっている。PER1000倍とは尋常ではない。「買われ過ぎ」どころの騒ぎではない上昇率だ。

しかし、これが正当化されているのが現在のアメリカの株式市場である。

さらに、最近のアメリカの株式市場はワクチン株や一部のIPO株を異常に持てはやされていて浮ついた投資家が飛び乗ったり飛び降りたりしている。実体経済がこれだけ悪化しているのに、株式市場は莫大な金融緩和・財政出動による「カネあまり」でバクチが横行している状態である。

良い悪いではなく、そういう状況になっている。

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バリュー投資の原理原則をそのまま使った

バフェットはこうした株式市場の「浮ついた動き」に参加していない。株価の動きだけを見て売った買ったを繰り返す投機に背を向けて、「良い会社を安い値段で買い長期で保有する」という伝統的なバリュー投資をじっくりと進めている。

ちなみに言っておくと、バフェットが商社株を買ったからと言って、これらの商社株が明日からいきなりぐんぐん成長していき、株価も上昇していき、あっと言う間に2倍やら3倍になるわけではない。

仮にそういうことがあったとしても、バフェット自体は別にそれを想定して株式を保有しているわけではない。

バリュー投資というのは本来は非常に地味なものであり、5年から10年の長きに渡ってじっくりと利益を取っていくタイプのものである。今日買って、来月に2倍になったのを見て売り飛ばすような投資ではないのだ。

こうしたバフェットの動きを見て『バークシャーが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の先に目を向け、世界の成長に賭けている可能性が高いことを示している』等のコメントを出している分析家もいる。本当だろうか。

恐らく違うと思う。なぜなら、バークシャーの発表文では「約1年間かけて取得した」とあるのだが、1年前は「コロナ」の「コ」もなかったからだ。

バフェットの今までの動きを見ると、そういう短絡的・短期的な見方が投資の決め手になったというよりも、「長期的に利益を出し続ける良い企業が安値で放置されているので、バリュー投資の対象として選んだ」というシンプルな理由の方が強いように見える。

「世界の成長が……」という大仰な目論みが投資の決め手になったのではなく、単に昔ながらのグレアム風の「良い会社を安く買って安全マージンを確保しつつ利益を得る」という原理原則をそのまま使ったと考える方がしっくりくる。

バフェットの目からすると、日本の商社株は5社まとめて買いたくなるほど安値で放置されていた、ということになる。

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私も久しぶりに日本の株式を買った

「良い会社を安い価格で買う」というバリュー投資は、どこか懐かしい気持ちがする投資手法である。この手法が「懐かしい感じがする」ように思えるのは、アメリカの株式市場はすでに良い会社を安値で買えるほど甘い市場ではないからだ。

アメリカの株式市場は良い会社はたちまち買われて安値で買えることは滅多にない。多くの投資家が「安い会社」を鵜の目鷹の目で狙っており、少しでも乖離があるとすぐに買われていく。

しかも、アメリカの株式市場はずっと高値圏が継続している。8月に入ってからは買われ過ぎにもほどがある。バフェット指数は180を超えている。シラーPEレシオを見ても割高になっている。

別にアメリカの株式を買ってはいけないというわけではないのだが、今は調子に乗って買いまくる時期ではなく、投資自体は少し控えめにして「何もしない」方が理に適っている局面ではないか?

そんな中でバフェットはアメリカの株式市場に上場されている優良企業ではなく、日本の企業を投資対象に選んできたのだから示唆に富んだ動きであると思う。

こうした「安値で放置されているバリュー株」は、実は安いと思って買っても、誰からも注目されないまま何年経っても安値で放置され続ける可能性が高い。安いバリュー株がブレイクするためには何らかの「カタリスト」が必要だ。

カタリストというのは「触媒」とも訳されるが、要するにバリュー株が見直されてブレイクしていく「きっかけ」を指す。

商社株は今まで安値で放置されて見捨てられていたが、バフェットが乗り込んできたことは十分に大きなカタリストになる可能性が高い。とすれば、日本人のバリュー投資家は何も考えずに「カタリストを得られたバリュー株」である商社5社を黙って買って保有しておいて損はないのではないか?

私も久しぶりに日本の株式を買った。この商社5社は私がバブルの時に買いまくっていた懐かしの株で、まさか今になってまた保有することになるとは夢にも思わなかった。日本の株式市場は見捨てたので、今さら戻ってきたことに複雑な気持ちもある。

しかし、バフェットというカタリストがある当面の間は保有しておくつもりだ。

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