アップルの時価総額2兆ドル突破。「他人と違う考え方をしろ」が勢力を持つ時代に

アップルの時価総額2兆ドル突破。「他人と違う考え方をしろ」が勢力を持つ時代に

アップルが世界最強の、いや宇宙最強の企業になったというのは、興味深い現象だ。「他人と違う考え方をしろ」というのは、奇妙な哲学であるとも言える。その哲学が時代を制したということになるのだから……。そのような目でアメリカのハイテク企業を見回すと、アップルだけでなくグーグルもフェイスブックもアマゾンも凄まじくユニークであることに気づく。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

時価総額2兆ドルのアップル

アップルが時価総額1兆ドル企業に達したのは2018年8月のことだった。それから約2年。アップルの時価総額は2兆ドルになった。凄まじい成長である。もはやアップルは宇宙最強の企業となった。

アップルは名実共にアメリカのハイテク企業の頂点に立ち、そしてその強大なブランド力、販売力で、これからも高収益を維持し続ける企業でもある。

しかし、このアップルも最初から順風満帆だったわけではない。

社内の混乱で創始者スティーブ・ジョブズが1981年に解任されて急速に魅力が色褪せて売上が落ちていき、赤字が累積し、ギル・アメリオ時代にはいよいよ倒産寸前にまで追い込まれている。

1997年にスティーブ・ジョブズが非常勤顧問として復帰した時、アップルはすでに資金が尽きかけていた。赤字は1000億円を超え、一時はあと90日で倒産という断崖絶壁にまで追い詰められていたという。

「ジョブズが始めたアップルというカルトはジョブズが終わらせるべき」と批評家が言っていたほど、アップルは経営的にも財政的にもズタズタの企業だったのである。

実際、アップルが復活できるのかどうかは誰にも分からないところだった。

しかし、アップルを支える熱狂的なファンは相変わらず存在していた。そして、スティーブ・ジョブズもまたアップルを心から愛していた。アップルは当初から特異な企業であり、その特異さが逆にアップルの復活のキーになった。

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アップルに残されていたのは哲学

金もない。シェアも失った。批評家にも見捨てられ、ユーザーもみんなマイクロソフトに流れてしまった。誰が見ても、どこから見ても、アップルには勝機がなかった。

そんなアップルに何があったのか。スティーブ・ジョブズの突破口は何だったのか。それは「哲学」だった。「革新的な製品によって、宇宙に衝撃を与える」という哲学だ。

他人の真似はしない。他人を追わない、現状に満足しない。この哲学をスティーブ・ジョブズは「Think different」と表現した。「他人と違う考え方をしろ」というこの哲学は、アップルのアイデンティティを強烈に指し示していたものだった。

初期のアップルは「個人が使えるコンピュータ」を引っさげて巨人IBMに挑んできたのだが、アップルは当初から「他人と違う考え方をしろ」で育ってきた企業だった。

1985年にスティーブ・ジョブズがアップルを追放され、11年後に復帰するまでの10年間でアップルが失い続けてきたのも、この哲学だった。

だから、金もない、シェアもない、見捨てられたアップルが最初に取り戻さなければならなかったのは「アイデンティティ」であり「哲学」だったのだ。

創始者スティーブ・ジョブズが戻ったことによってアップルはアイデンティティと哲学の両方を取り戻し、そしてこの哲学に沿った製品が市場に受け入れられることによってアップルは復活していった。

それが iMac であり、iPod であり、iPhone だった。

現在のアップルを支えているのは「iPhone」という史上最強のスマートフォンだが、アップルがなければスマートフォンというジャンルはこれほどすぐれたデザインとユーザーエクスペリエンスで登場しなかった。

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確固たる哲学を持っていた企業

アップルが2018年に時価総額1兆ドル企業になり、2020年に時価総額2兆ドルの企業になったのは、とにかく「iPhone」という製品が広く受け入れられてきたからである。

スマートフォンという分野はアップルが極限までブラッシュアップした製品で拡大し、世の中を変えた。そういう意味でアップルの成功はスマートフォンの分野で成功したからであると言うことができる。

しかし、それだけではない。「スマートフォンで当てた」という見方は表層的な見方であり、アップルの成功のすべてを語っていない。

アップルの成功は、一にも二にも、企業としての確固たる哲学があった。文明を変えてしまうほどのイノベーションを生み出し、それを受け入れてもらうという「Think different」の哲学を強烈に持ち続けた。

そして、その哲学によって注意深く経営が組み立てられて、今日の前人未踏の成功に到達した。

道なき道を切り開くというのは簡単なことではない。時には大きな失敗をすることもある。アップルも完璧な企業ではなく、今までに数々の失敗製品を生み出している。

しかし、それでも「他人の真似はしない。他人を追わない、現状に満足しない」という哲学を追求して、極限まで製品をブラッシュアップする姿勢が大きな尊敬を呼び寄せている。

アップルの強烈なブランド力は、強烈な「哲学」が生み出したものであり、その哲学が持つ力は大きなものである。

私がアップルという企業に惹かれるのは、この企業がとても奇妙な企業だからだ。製品をスペックや販売力で語らない。哲学で語る。ビジネスを追求しているのだが、根底に大きな哲学がある。

この企業は普通の感覚では説明できない奇妙な「何か」を持ち合わせている。それが「哲学」だった。

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「他人と違う考え方をしろ」という企業

アップルが世界最強の、いや宇宙最強の企業になったというのは、そういう意味で興味深い現象だ。「他人と違う考え方をしろ」というのは、奇妙な哲学であるとも言える。その哲学が時代を制したということになるのだから……。

そのような目でアメリカのハイテク企業を見回すと、アップルだけでなくグーグルもフェイスブックもアマゾンも凄まじくユニークであることに気づく。

これらの企業はすべて「イノベーションで世界を変える」という点に焦点が合っている。そして、既存の枠組みをイノベーションで破壊しながら突き進んでいる。

そうであれば、アップルも重要だが、アップルだけでなく現在のアメリカのハイテク企業はそのどれもが重要な存在であることに気づくはずだ。

今後、インターネットはさらに重要なインフラとなり、時代を変革していく。人工知能やロボットや自動運転や仮想現実やブロックチェーンは、文明のあり方を一変させてしまう。

「他人と違う考え方をしろ」という企業が世の中を変えていくのだから、これからの世の中は「今までとまったく違った社会になる」というのは、現代人は肌で感じるはずだ。

そのため、私たちもまた考え方を変えなければならない時代になっているということに気づかなければならない。「他人と違う考え方をしている人間」が勢力を持つ時代に入ったのだ。

そうであれば、今までと同じことをしていたり、同じ考え方をしていたり、同じ生き方をしていればもう次の時代には完全に取り残されて生きていけなくなってしまう可能性があるということになる。

私たちは時代に合わせて、自らをも「Think different」しなければならない時代に差し掛かったのだ。用意は、できているだろうか?

『スティーブ・ジョブズ全発言 世界を動かした142の言葉』

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