戦後最悪のマイナス成長。大不況は、残酷な競争といじめの社会を出現させる

戦後最悪のマイナス成長。大不況は、残酷な競争といじめの社会を出現させる

コロナによって経済環境が著しく悪化し、人々は激しい経済競争にさらされる。自分が生き残るために手段を選ばない社会が来る。これが突き進んでいくと、仲の良い同僚や仲間を蹴落としても自分が生き残る能力が求められる。うかうかしていれば、自分が食えなくなるからだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

より強烈かつ過酷な「弱肉強食の社会」と化す

2020年8月17日。内閣府が発表した2020年4〜6月期のGDP(国内総生産:季節調整済み)は衝撃的な数字だった。

すでに3四半期連続のマイナスで、年率換算で見ると27.8%減で、これはリーマンショックをはるかにしのぐ戦後最悪のマイナス成長だった。政府が事前に想定していたよりも悪い数字であり、非常に深刻だ。

企業倒産件数もじわじわと増えている。7月は今年最多の789件。しかし、この数字は1000万円以上の負債総額を抱えた企業を対象にしたもので、件数に入っていない1000万円未満の小さな会社の倒産も急増している。

さらに倒産ではなく廃業も増えている。壮絶な状況悪化だ。

これに伴って派遣切りや雇い止めや無給の一時的休業も増えている。厚生労働省は各所に「雇用の維持」を要請しているのだが、業界最大手であるスタッフサービスでも雇い止めが止められない事態となっている。

そもそも、非正規雇用というのは「景気の調整弁」として取り入れられた制度なのだから、コロナ禍で景気が壮絶なまでに悪化している今、派遣切りが強行されるのは想定された出来事だ。景気が回復しないのであれば、政府が何を要請しようとも派遣切りはこれからも起こる。

コロナショックの今、これは日本だけで起きている現象ではなく、全世界で同時進行している現象である。

まだまだコロナに対して効果的に効くワクチンや治療薬は登場しない。今年中には流通しない可能性も高い。中央銀行や政府は株式市場の買い支えはうまくやっているのだが、実体経済の悪化は止めることができていない。

そのため、社会や人々は余裕を失い、自分のことで精一杯となり、今後はより強烈かつ過酷な「弱肉強食の社会」と化す可能性が高い。こうした弱肉強食の社会の中で、蹴落とされる人も増えれば、競争に敗れる人たちも増える。

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過大なストレスによって心が壊れてしまう人々

コロナによって経済環境は著しく悪化し、雇い止めも休業もリストラも当たり前になり、人々は生き残りのために激しい競争にさらされる。

競争社会とは「自分が生き残るために手段を選ばない社会」である。これが突き進んでいくと、仲の良い同僚や仲間を蹴落としても自分が生き残る能力が求められる。うかうかしていれば、自分が食えなくなるからだ。

まわりがみんな敵となる。そのような状況になると、今の社会で何とか生き残るためには「他人を蹴落とすしかない」と誰もが考えるようになる。さもなくば、自分が路頭に迷ってしまうことになるからだ。

世の中には競争を好む人もいるのだが、そうでない人も膨大に存在する。そのため、このような社会のあり方に馴染めない人々が次々と犠牲者になる。

犠牲になるというのはどういうことか。苛烈な資本主義社会で犠牲になるというのは、要するに社会から見捨てられて、どん底(ボトム)に転がり落ちていくということである。

寛容な社会では、競争に長けていない人であっても職を得たり、職を継続したりすることができる。しかし、厳しい不況がやってきて仕事が得にくくなると、競争が苦手な人は押しのけられるようになる。

競争社会に馴染めないのに競争させられ、しかもそこから降りることができない。精神的にキツい状態になる。この傾向は今後はさらに先鋭的になっていき、温厚な人々の精神を確実に蝕んで荒廃させていく。

しかし荒廃していく社会では、限界に達した人から心を病むようになっている。

この30年、日本の社会は政治の無策によってバブル崩壊による社会の環境悪化がじわじわと続いていたのだが、こうしたこともあってうつ病患者は、とっくに100万人を超えている。

風邪や病気で身体が壊れるように、心や感情が壊れて起き上がれなくなるほど重度の病気になる人が日本だけでも100万人もいるのだ。

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誰もが自分が生き残るために「何」をするのか?

じっさいにうつ病になってしまった100万人だけではない。このストレス社会の中で押しつぶされるように「壊れかけ」の状態になっている「うつ病予備軍」はその10倍はいるのではないかと精神科の医師は述べる。

100万人の10倍と言えば1000万人である。この1000万人はいつでも予備軍から本格的な病気になる可能性がある。これは、危機的なことでもある。

そして、激甚化していく競争社会の中で発生するのは「いじめ」だ。雇用が不安定化すると、人々は迫り来るリストラから自分を守るために「代わりの誰か」を突き落とそうとするようになる。

自分を守るために犠牲者を誰にするのかを集団が無意識に選び、そして、最も弱い者をみんなで攻撃することになる。これは、動物が持つ本能と言っても過言ではない。そのため、弱者は徹底的にいじめられる。誰もが自分が生き残るためにそうする。

1. 「集団の中で最も弱い人間」を選ぶ。
2. 弱者は無用であると集団の空気で決定する。
3. 攻撃を弱者に向け、自分に向かないようにする。

抑圧された集団では、こうした残酷な集団心理が必ず発生するのだが、実は攻撃される側だけでなく、攻撃する側もストレスになっていく。

自分が弱者になってしまえば、一転して自分が激しい攻撃にさらされることになるからである。自分の番にならないためには、常に自分よりも弱い人間を探し出して攻撃しておかなければならない。

この社会構造の残酷なところは、「もうそこから降りたい」と思っても降りられないことだ。社会のシステムの中に弱肉強食の資本主義が組み込まれているので、死ぬまで誰かを攻撃し、戦い続けなければならないのである。

自分が犠牲にならないために死ぬまで「弱肉強食でのサバイバル」を余儀なくされる現代人は、間違いなく誰もが神経をすり減らし、精神的にボロボロになっていく。

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「心の強靱さ」と「精神的回復力」を求める社会に

生まれつき神経がタフで、残酷な競争社会になって「いじめ」が横行する世界になっても、まったく動じない人もいる。動じないどころか、他人を攻撃して潰すことに快楽すら得る人もいる。

逆に、こうした社会のあり方に心が傷つく人もいる。

弱肉強食化していく社会の中では、当然のことながら荒廃した中でも平然としている人の方が需要が高い。社会はこれからさらに残酷に、そして過激になっていくので、荒廃した社会に相応しい人が求められる。

だから、現代社会は人々に「心の強靱さ」を求めるようになっている。そして、それを強制していくようになる。

時代はもっと荒廃するのに、これくらいで精神的に潰れていたら企業は労働者を雇用できないし、国も医療費の面倒を見きれない。

そのため、現代社会はこれから「もっと強靱な心になって働け」と私たち全員にそれを押し付けてくるようになる。

企業も国も、荒んだ競争社会で生き残れる「精神的に鈍感な人」を望んでいる。そのような人間を作るために、「心の強靱さ」が強調されるようになり、必須となり、それが国民の素養とされるようになる。

そして、それを身につけた人は、自分がいかに精神的に鈍感かを競うようになる。

もちろん、精神的な強さや逆境から回復する力は人間にとって大切なものである。しかし、それを強制し、タフでないと生きていけない苛烈な社会が正常かどうかは別の問題だ。それは正常ではない。

しかし、コロナによってどん底(ボトム)が広がっていく中、時代は明らかにその方向に暴走している。

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