不安の象徴であるゴールドが上がり、同時に楽観の象徴である株式市場も上がる

不安の象徴であるゴールドが上がり、同時に楽観の象徴である株式市場も上がる

「自国通貨が信用できない」と思う国に住んでいる人々は、紙幣を貯め込んでも無価値になるかもしれないので、何とか他の「価値あるもの」で保有できないかと常に思う。「紙幣の代わりになる安全な資産」は、途上国では切実な要請なのである。そんなものはあるのか。ある。それが金(ゴールド)だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

紙幣の価値は国の信用によって上下する

今、金(ゴールド)価格が上昇している。1グラム当たり7000円を突破して、もっと上がっていこうとしている。ゴールドの価格をトレースしたETFである【GLD】も173ドルに達している。

人々はあまり意識しないが、ゴールドが買われるというのは、人々が「政府を信用しなくなる時」に起こる。

もっと具体的に言うと、政府が紙幣をばんばん刷ってばらまき「もしかしたら紙幣に価値がなくなり、政府もコントロールできなくなるかも」という疑念が人々の間に芽生えた時に、金(ゴールド)は買われる。

ゴールドの価値は不変だが、紙幣の価値は国の信用によって上下する。紙幣はその国の政府の信用で成り立っているので、「この国はもう駄目だな」「この国の通貨はもう駄目だな」となった時、通貨の価値は大暴落する。

その国の経済が崩壊し、政府がそれをコントロールできなくなったら、誰もそんな国の紙幣など保有しておきたくない。紙幣は紙くずになってしまう危険性がある。早く手放したい。

たとえば、ジンバブエという国が崩壊しそうになったら、どうなるのか。ジンバブエ・ドルを持っていたら国の崩壊と共に紙幣の信用も消える。そのため、誰もが早く「紙くず寸前」のジンバブエ・ドルを手放そうとする。

そうすると、ジンバブエ・ドルの価値はどんどん消えていき、誰もそんなものを受け取りたくなくなる。それで買い物をしても、誰もがそれを受け取りたくないので、受け取ってもらうためにドルを余分に追加して支払い、やっと受け取ってもらう。

つまり、紙幣価値が消えていくとインフレになる。実際、かつてのジンバブエではそれが起きて極度のインフレが発生した。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

「国が危なくなったら、紙幣なんか紙くずになる」

社会が混乱し、政府が状況をコントロールすることができなくなりつつあると、人々は心配するようにある。国はうまくやっていけるのか、政府は対処できるのか、世界経済は本当に大丈夫なのか、と考えて不安が渦巻いていく。

「国が危なくなったら、紙幣なんか紙くずになる」

今の日本はまだ曲がりなりにも経済大国であり、「円」は国際的にも信頼があるハードカレンシー(決済通貨)なので、「もしかしたら国がつぶれて紙幣が紙くずになるかもしれない」と発想する人はあまりいないはずだ。

しかし、世界はそうではない。途上国になればなるほど、国民は自国の通貨など信用しておらず、実際に自国の政府が崩壊するたびに紙幣が無価値になってしまった経験をした人々も大勢いる。

「自国通貨が信用できない」と思う国に住んでいる人々は、紙幣を貯め込んでも無価値になるかもしれないので、何とか他の「価値あるもの」で保有できないかと常に思う。「紙幣の代わりになる安全な資産」は、途上国では切実な要請なのである。

そんなものはあるのか。ある。それが金(ゴールド)だ。

金(ゴールド)は、「どうしても自国政府が信用できない」「自国の紙幣はいつでも紙切れになる可能性が高い」という国に住んでいる人たちにとっては、まさに打ってつけの資産である。

最も重要なのは、国が崩壊して国外に脱出する時、一粒のゴールドさえ持っていれば、他国でも「必ず」その国の通貨に換金することができて、しかも価格が担保されているということだ。

金価格は世界共通だ。1グラム(もしくは1オンス)の価格は先進国だろうが途上国だろうが常に一定で、しかも全世界どこでも換金できない国はない。

だから、「有事の金」なのだ。有事が近づいてきていると人々が思う時、人々は紙幣を金(ゴールド)に変える。ゴールドに変える人が増えていくと、必然的にゴールドの価格は上がっていく。

【ここでしか読めない!】『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』のバックナンバーの購入はこちらから。

金(ゴールド)価格の正体は、人々の不安

今、金(ゴールド)価格が上昇している。それは、全世界の人々が「コロナのパンデミックは、もしかしたら有事を引き起こすかもしれない」「ひょっとしたら、資本主義はめちゃくちゃになってしまうのかもしれない」「国際社会は大混乱してしまうのかもしれない」と思っているからである。

その不安は的中するかどうかは問題ではない。

問題なのは、世界中で多くの人々が「そのように思うようになっている」という傾向の方だ。本当に資本主義が崩壊するかどうかが重要なのではなく、人々に不安が広がっているという認識が重要なのである。

なぜなら、その不安こそが金(ゴールド)価格に反映されるものだからだ。

実際に国家がパンデミックに対して制御不能(アウト・オブ・コントロール)になってしまうのかどうかは関係ない。不安が広がったら、人々は静かに紙幣をゴールドに転換していく。それが社会の見えないところでじわじわと広がると、やがてそれが金(ゴールド)の価格に反映される。

そして、ある日ふと気が付いたら金価格は誰が見ても一目瞭然なほど上がっていることが確認される。そして、全世界は「人々に不安と恐怖が広がっている」ということを事実として認識することになるのだ。

金(ゴールド)価格の正体は、人々の不安なのである。今、まさに全世界で中国発コロナウイルスが爆発的蔓延して止まらないような状態になってしまっている。

ワクチンや治療薬はかなり急いで開発されているのだが、ワクチンの開発は必ずしも成功するとは限らないし、臨床試験は時間がかかるし、製造も時間がかかる。治療薬も然りだ。

もしかしたら、その間にグローバル経済も各国政府も手に負えない状況が発生して経済はめちゃくちゃになるかもしれない。そう考えている人が今、金(ゴールド)を買っているということだ。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

「人類は必ずコロナの試練を乗り越える」

中国発コロナウイルスは大きな試練であるのは間違いない。パンデミックはまだ収束しておらず、グローバル経済は再開しているわけでもない。

しかし、そんな中でも「人類は必ずコロナの試練を乗り越える」「コロナという試練があるなら、イノベーションで克服したらいいではないか」「人々は恐怖を煽るマスコミに影響され過ぎ」と考える人も大勢いる。

そんな人たちは、不安に駆られて金(ゴールド)を買っている人たちをあざ笑いながら、いち早くコロナ時代に対応して利益を出せる企業の株式に殺到している。それが、リモートワーク関連で良い立ち位置にいるハイテク企業の株式を押し上げているのだ。

GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)は言うに及ばず、マイクロソフトもIBMもリモートワーク関連に乗っている。

他にも「ズーム」「クラウドストライク」「オクタ」「ドキュサイン」「ファストリー」「ペイパル」のような企業は軒並み買われている。ナスダック市場のトップ100企業をパッケージしたETF【QQQ】も絶好調である。

これらのハイテク企業を買い漁っている投資家は、別に資本主義が死ぬとも思っていないし、社会がパンデミックで崩壊するとも思っていない。コロナはどのみち遅かれ早かれ収束するので、株式市場において勝ち組になる企業だけを追い求めればいいという考え方をしている。

つまり、興味深いことに、今の情勢は「これからどうなるのか分からない」という超悲観な投資家が金(ゴールド)に殺到し、逆に「コロナなんか大したことない」という超楽観的な投資家がハイテク株に殺到するという二極分化が起きているということである。

最終的にどちらが正しい「見方」だったのかは、あと1年もすれば分かる。

鈴木傾城のDarknessメルマガ編

CTA-IMAGE 有料メルマガ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」では、投資・経済・金融の話をより深く追求して書いています。弱肉強食の資本主義の中で、自分で自分を助けるための手法を考えていきたい方、鈴木傾城の文章を継続的に触れたい方は、どうぞご登録ください。

一般カテゴリの最新記事