株式市場は実体経済の悪化も暴動も完全無視。悪い夢でも見ているような気分だ

株式市場は実体経済の悪化も暴動も完全無視。悪い夢でも見ているような気分だ

コロナウイルスの集団感染や爆発的大感染は何度もぶり返すし、一時的に落ち着いたとしても何度も何度も感染者の増大や死者の増大が起こる。そもそも、途上国はこれからもっと増えていくわけで、いくら先進国が収まったと言っても第二波・第三波は人の動きが制限できない以上は避けられない。そのたびに、実体経済は悪化してしまう。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「株価」だけを見れば経済は回復したように見える

アメリカの株式市場が上がっている。そのため、3月に大きなダメージを受けたアメリカの富裕層の多くは資産を取り戻しており、最近になってから「もうコロナショックは克服した」という声を上がるようになった。

確かに株価だけを見ればそうなのだ。あたかもアメリカは「株価」だけを見れば経済は回復したように見える。

株式市場が急激にショックから戻しているのは、FRB(連邦準備制度)は「モラルハザードを誘発するのではないか」と言われるほどの無限の金融緩和を行っており、さらに政策金利も0.25%で、ほぼゼロ%だからである。

じゃぶじゃぶに余ったカネが手元にあって、国債を買っても利息が付かないのであればその資金は株式市場になだれ込む。これは教科書通りの動きであるとも言えるが、実体経済をまったく無視した動きであるとも言える。

実体経済と金融市場の乖離は、やがてどこかで是正されることになるのだが、金融市場の好調さに助けられて実体経済が上向くのか、それとも実体経済の悲惨さに引きずられて金融市場が下がるのかは今のところは何とも言えない。

未来は、中国発コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発、各国の協調と協力関係、国民ひとりひとりの良識あるライフスタイルが、それぞれ複雑に絡み合って状況が決まることになる。

今のところ、状況はそれほど芳しいものではない。

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実体経済は株価に合わせて戻るのか?

ワクチンや治療薬の開発は進んでいるが、当初思っていたよりも治療薬もワクチン開発も「簡単ではない」ということが見えてくるようになった。

コロナウイルスは根絶できず共存しなければならない「新たな病気」になるのではないかと専門家は言うようになっている。ただ、良いワクチンや治療薬ができれば予防接種を打ったり、かかっても医者に行って治療してもらえるので脅威でなくなる。

そうしたワクチンや治療薬がきちんと流通するのは来年以降になる気配だ。少なくとも今年中にできそうにない。そうであれば、人々は果たしてかつてのように無防備に街に出たりショッピングしたり食事したりパーティしたりするようには思えない。

何も気にしない人もいるだろうが、警戒する人もかなりの数でいる。とすれば、実体経済の戻りは遅れる可能性の方が高いようにも見える。

各国の協調と協力関係も悪い。中国は相変わらず傲慢極まりない国であり、軍拡主義であり、全世界に工作員を送って世論操作の工作を行ったり、知的所有権の窃盗を行ったりしており、まったく態度を改めることがない。

トランプ政権はこうした中国の態度を激しく糾弾しており、中国をグローバル社会から切り離して孤立化させようとしている。こうした動きの中で、世界各国は米中を秤にかけてせめぎ合っている。

その上、それぞれのコロナ問題が落ち着くまで国境の封鎖は依然として続くわけで、グローバル経済はすぐに協調や協力で動けるわけでもない。

今後、失業率の増加や不景気の長期化で国民のフラストレーションが爆発していくと政情不安につながっていくわけで、そうなると政府への怒りの矛先を他国にそらそうとする動きも出てくる可能性もある。

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株が上がっても株を買いまくるような状況にならない

国民ひとりひとりのライフスタイルも、自粛だとかステイホームとか言われても限度がある。人々は外に出て働かないといけないし、接客業が人を避けていては仕事にならない。

また、いつまでも人々のふれあいを制限するわけにはいかない。それを強制しても、やがて人々は無視することになる。もちろん、ワクチンや治療薬ができるまで以前のような無防備なふれあいにはならないが、それでも強度な制限はできない。

そうするとコロナウイルスの集団感染や爆発的大感染は何度もぶり返すし、一時的に落ち着いたとしても何度も何度も感染者の増大や死者の増大が起こる。

そもそも、途上国はこれからもっと増えていくわけで、いくら先進国が収まったと言っても第二波・第三波は人の動きが制限できない以上は避けられない。そのたびに、実体経済は悪化してしまう。

このような状況からすると、株式市場がいくら上昇していたとしても、実体経済の「戻り」は株式市場に合わせて改善していくという流れにはならないという考え方も十分に成り立つ。

株価が安くなれば常に買い向かうウォーレン・バフェット氏がまったく動かないのは、バフェットは株式市場の動きではなく実体経済の動きを見ているからでもある。バフェットは「株式を買うのではなく企業を買う」というスタンスだ。

そのスタンスであれば、まだ実体経済が改善していないのに株価だけ上がっても株を買いまくるような状況にならないのである。

バフェットは恐らく、株価が上昇するか下落するかを見ているわけではなく、実体経済が回復するかどうかを見ているのだと思われる。需要が回復する道筋が見えないのであれば、状況はもっと悪化する。

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貧困や格差と言った大きな社会問題が全世界で浮上する

製造業も、旅行業も、航空業も、飲食業も、不動産業も、そして銀行業もコロナショックによって大きく株が売られた。これらの企業の株も株価が戻ることが期待できるかもしれない。

投資家の間では、「もう大丈夫だろう、状況はそんなに悪くないだろう」という判断が生まれつつあるからだ。

しかし、実体経済が戻ってきていないし、戻ってきたとしてもかつてのように無防備な形で戻ることは決してない。需要は100%の回復にならない。そうであれば、いくら株価が戻っても、結局は実体経済に揉まれて落ち込むことになる。

今、期待できるのは、本当に一部のセクターだけである。それはコロナウイルスの治療薬やワクチンを開発している製薬企業・バイオ企業や、ステイホームで潤うリモート関連銘柄だ。

これらの中で、当てはまる個別銘柄「だけ」がどこまでも株価が伸びるが、株式市場全体で見るとむしろ実体経済の悪化に嫌気をさして悪い方向に向かう局面の方が増えて当然だ。

今は「コロナバブルではないか」と言われるほど株価が上がっているのだが、いくら株価が上がっても憂鬱な気持ちになってしまうのは、先行きはそれほどバラ色ではないことが見えるからだ。

今後、コロナウイルスの脅威とは別に、貧困や格差と言った大きな社会問題が全世界で浮上するようになり、それが政情不安や地域紛争の引き金になっていくと、実体経済の悪化はさらにひとつ下に向かう。

株式市場は、そうした実体経済の悪化の予兆もアメリカで起きている暴動もすべて無視して能天気に上がっている。

何か悪い夢でも見ているような気分だ。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

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