アドビ・システムズ。サブスクリプションを成功させた超優良ソフトウェア企業

アドビ・システムズ。サブスクリプションを成功させた超優良ソフトウェア企業

(6月11日。アドビが2020年第2四半期の業績を発表しているが、過去最高収益を達成している。素晴らしい企業が改めて読んで欲しい)

アドビがソフトウェアをサブスクリプションモデルに切り替えたのは2011年からであり、当初は「なぜ毎月アドビにカネを支払わなければならないのか」と大不評であり、大いに反発するユーザーも多かった。しかし、このサブスクリプションモデルはユーザーも「常に最新のバージョンを常に早く使え、しかも新しいソフトウェアもその追加されて便利になる」というものであることが理解されて、逆に大きな支持を得ることになった。(鈴木傾城)

すべての機能を使いこなすことは到底できないほどの機能

最近、アドビ(Adobe Systems)のソフトウェア製品ばかり使っている。画像編集はフォトショップを使い、印刷用のためのグラフを作るためにイラストレーターを使い、動画編集にはプレミア・プロを使って、アドビ製品どっぷりの中での日常だ。

アドビ製品は専門向けのソフトなので、それぞれが異常に高機能でかつ使いこなしにノウハウが必要で、ひとつのソフトウェアのすべての機能を使いこなすことは到底できないほどの機能がある。

それぞれの製品にそれぞれの業界のプロがいて、これらのソフトを極限まで使いこなしている。クリエイティブ分野のプロは基本的にアドビ製品一択であり、プロになるということはアドビ製品を使いこなすということでもある。

印刷業界でも、今ではアドビのインデザインが広く使われており、日本のほとんどの印刷物はインデザインで作られているのではないか。

アドビはこれらの製品をサブスクリプションモデルで提供しているのだが、こうしたプロの道具は、コロナがどれくらい広がろうが、世の中がめちゃくちゃになろうが「だから使わない」という選択肢はならない。

アドビのソフトウェアで仕事が回っている以上、それを外すことはできない。

アドビ製品は高いが、代替がほとんどないのでプロはもはや空気のようにアドビと共に過ごしている。仮にアドビよりも安いフォトショップの代替品があったとしても、アドビには多くの製品群がそれぞれが連携し合って効果を発揮するので、他の製品に浮気できない仕組みになっている。

しかも、アドビ独特のUI(ユーザーインターフェイス)に慣れてしまうと、余計に他のソフトに移れない。移った瞬間に空気のように使っていた道具の使い勝手が変わって居心地が悪くなり、またアドビに戻るのである。

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この企業の財務諸表を見てみたら、すごかった

私もすっかりアドビに取り込まれたひとりであり、毎月6200円近くを払ってアドビ製品を使っている。

私はプロとしてアドビ製品を使っているわけではないのだが、それでもアドビ製品から離れられないのだから、プロならなおさらだと思って「アドビはかなり儲けているのではないか」と思って何気なくこの企業の財務諸表を見てみたら、すごかった。

それぞれの株式指標が半端ない、優秀な数字を叩き出していたのだった。

アドビは2020年3月13日に2020年度第1四半期の業績を発表しているのだが、収益は過去最高の30億9000万ドルで前年同期比19%増、デジタル メディア分野の収益も前年同期比22%増、デジタル エクスペリエンス分野の収益も前年同期比15%増と、良い数字が並んでいる。

ただ、この決算は中国発コロナウイルスがアメリカを蹂躙する前のものだから、コロナショックは含まれていない。コロナの影響は第2四半期に現れてくるはずだが、それでもアドビは2020年度第2四半期の財務目標は、全体的にプラスを見ている。

全世界の企業が苦しんでいる中で、目標としてもプラスを見ることができるというのがアドビのビジネスのすごさを物語っている。アドビは紛れもなく経営的に「タフ」な企業であることを意味している。

長期投資家は、その習性として企業の財務諸表を見るときは真っ先にROE(自己資本利益率)を見る。ROEは「自己資本に対してどれだけの利益が生み出されたのか」を見るもので、かつては株主資本利益率とも呼ばれていたものだ。

アドビのROEは2015年から右肩上がりに膨れ上がっており、現在は30%近いところまできている。ROEは15%を超えた状態が継続していると優秀であると見なされるのだが、アドビは十分に優秀な企業であることが分かる。

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サブスクリプションモデルをいち早く成功させた企業

粗利(Gross Profit)はどうか。粗利とは売上高から仕入れにかかった原価を差し引くことで求められる数字であり、その企業が本当に儲かっているのかどうかを見る重要な指標なのだが、アドビの粗利はここ近年は本当に素晴らしい(単位:ミリオン$)。

2015 4051.194
2016 5034.522
2017 6291.014
2018 7835.009
2019 9498.577

完全なる右肩上がりである。アドビは5年前の2倍の粗利を生み出す企業として成長しているのが分かる。

アドビがソフトウェアをサブスクリプションモデルに切り替えたのは2011年からであり、当初は「なぜ毎月アドビにカネを支払わなければならないのか」と大不評であり、大いに反発するユーザーも多かった。

しかし、このサブスクリプションモデルはアドビの財務を安定させる役割を果たすと共に、ユーザーも「常に最新のバージョンを常に早く使え、しかも新しいソフトウェアもその追加されて便利になる」というものであることが理解されて、逆に大きな支持を得ることになった。

アドビをずっと悩ませていた海賊版の横行もこれで一掃された。このサブスクリプションの切り替えこそが、アドビの近年の成長の基礎となったことが数字として表れている。その効果が財務に現れたのが2013年から2014年頃からだったと言える。

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アドビの素晴らしさは特筆すべきものがある

財務を見る上で、もうひとつ重要なのはCFPS(1株当たり営業キャッシュフロー)である。これは、「その会社はいくらの現金を1年間で生み出せるのか」というものを見る指標である。

経営は常に「キャッシュ・イズ・キング」なのだ。キャッシュが生み出せないビジネスはリスクが大きな企業である。そして、このCFPS(Operating Cash Flow Per Share)が成長している企業は「成長企業」である。アドビはどうなのか。このようになっていた。

2015 2.8975
2016 4.362
2017 5.8127
2018 8.0935
2019 8.9953

ここ数年、CFPSも尋常ではない伸び率になっていることが分かる。

長期投資家のウォーレン・バフェットはフリーキャッシュフロー(自由に使える現金がどれだけあるかを示すもの)をことさら重視する投資家だ。

アドビのフリーキャッシュフローをFCFPS(一株当たりキャッシュフロー:Free Cash Flow Per Share)で見ても、やはり美しい右肩上がりであり、手持ちの現金は5年前の3倍近くにまで膨らんでいるのが数字で見て取れた。

EPS:一株当たり当期純利益(1株に対して当期純利益がいくらあるのか)
ROE:自己資本利益率(自己資本に対してどれだけの利益が生み出されたのか)
CFPS:1株当たり営業CF(その会社はいくらの現金を1年間で生み出せるのか)

重要ないくつもの尺度で見ても、ここ数年のアドビ・システムズの素晴らしさは特筆すべきものがある。なるほど、これが「優良企業か」とうなるほど旬の企業であるとも言える。

私から毎月6200円近くを税金のように持っていく企業なので、この企業の株でも買って取られた分を取り返そうかと思うほど優秀だ。もっとも、もう私は個別銘柄は買わないことに決めているのだが……。

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