
人々は自宅に「軟禁状態」になることによって、ますますインターネットへのシフトを余儀なくされており、日常生活のほとんどをインターネットを介して完結する世界に足を踏み入れたのである。コロナによる自粛が長引けば長引くほど、人々の「自宅完結」は習慣になっていき、やがて人生になっていく。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
アマゾンは紛れもない「勝ち組」の企業に
中国発コロナウイルスによって多くの企業が売上を落として壊滅的なダメージを受けるようになっているのだが、逆に伸びている企業もある。
たとえばアマゾンだ。
コロナによって人々は強制的な自粛を強いられており、今までのようにショッピングモールをうろついて何かを買うとか、スーパーマーケットで食品を買うという「当たり前の日常」が困難になった。
全世界で「ステイ・ホーム」、すなわち自宅でじっとしていることを強いられて、人々は欲しいものを買うにはインターネットを使うしかなくなった。だからインターネット・ショッピングの覇者であるアマゾンに人々のアクセスが集中して、アマゾンはさばききれないほどの注文の急増に対処している。
あまりにも注文が増えすぎたので、アマゾンは消費者の注文を「減らす」ような対応をせざるを得ないほどになってしまっている。
これを受けて株価も急上昇している。ほぼすべての株式が低迷する中、アマゾンは急激に値を戻して、ついに最高値をつけるほどになった。コロナ時代の中でアマゾンは紛れもない「勝ち組」となったのだった。
アマゾンだけではない。
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コロナを制した製薬会社も次の時代の「勝ち組」
最も分かりやすい「勝ち組」は、バイオ企業であると言える。中国発コロナウイルスは特効薬や治療薬が開発されなければ事態は収束しない。全世界は固唾を飲んでワクチンの登場を待ち望んでいる。
だから、コロナウイルスを封じ込めるためのワクチンを開発する企業が注目を浴びているのである。
多くのバイオ企業・製薬会社がワクチン開発に乗り出しており、80種類以上ものワクチンが研究開発されている。その中で最も有望なワクチンを開発している企業が、以下のものである。
ギリアド・サイエンシズ
モデルナ
リジェネロン・ファーマシューティカルズ
ギリアド・サイエンシズの開発しているワクチン「レムデシビル」は中でも最有力候補となっており、アメリカではコロナ感染者の重症患者53名に投与して7割が臨床的改善を見たと報告されている。
ただ『進行中の治験からとられた断片的なデータは不完全なものであり、治療薬候補の安全性や有効性について結論を引き出すべきではない』という報道もあり、まだまだ手放しで喜べるような状況ではないのだが、コロナ克服に向かって一歩一歩近づいているというのは間違いない。
コロナはインフルエンザのように変異する。だから、ギリアドは変異するたびに、ワクチンを開発するということになる。こうしたことから、投資家はギリアド・サイエンシズに勝機を見出しているようだ。
コロナを制した製薬会社も次の時代の巨大な「勝ち組」となるだろう。
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経済環境に大きなパラダイムシフトが起きている
人々は自宅に縛りつけられているような状況だ。そのため、自宅でヒマを潰すためにインターネットで映画やドラマを見ているのだが、そこでアクセスが殺到しているのがNetflix(ネットフリックス)である。
1月から3月にかけてネットフリックスの会員は1500万人も増えて総計1億8286万人、純利益も前年同期と比べて約2倍に達している。これは過去最高益である。映画館は壊滅状態と化しているのだが、その分をネットフリックスが総取りしていた。
ネットフリックもまたコロナ時代の「勝ち組」となっていた。
また通勤やオフィスの使用が制限されるようになったことから、急激にテレワークやビデオ会議に対する需要が増えている。
Zoom(ズーム)などがその筆頭で伸びているのだが、「ズーム」だけではなく、マイクロソフトの「Teams(チームス)」「スカイプ」、グーグルの「ハングアウト」、フェイスブックの「メッセンジャー」、シスコの「Webex(ウェブエックス)」などが次々と台頭している。
「ズーム」が頭一つ抜け出しているのだが、セキュリティ問題で躓いたりしているので、必ずしもこれがデファクトスタンダードを取るかどうかは分からないのだが、この分野は急激に伸びていて関わる企業の株価を上げている。
こうしたテレワークに必要なソフトウェアやインフラを提供する企業が、次の時代に大きな影響力を持つ企業となっていても不思議ではない。
こうして見ていくと、中国発コロナウイルスによって壊滅状態になった経済環境の中で、早くも経済環境に大きなパラダイムシフトが起きているのが分かる。
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さもなくば、コロナが収束しても時代に殺される
人々は自宅に「軟禁状態」になることによって、ますますインターネットへのシフトを余儀なくされており、日常生活のほとんどをインターネットを介して完結する世界に足を踏み入れたのである。
コロナによる自粛が長引けば長引くほど、人々の「自宅完結」は習慣になっていき、やがて人生になっていく。
製薬会社がコロナウイルスに効くワクチンを開発したら、人々はやっと自粛という名の「自宅軟禁」から解放される。
しかし、その頃には「いや、もう自宅でインターネットを介して仕事も娯楽も買い物もすべてできる体制になったのだから、もうこのままでいいのではないか?」と思うようになっているかもしれない。
また企業も「従業員をテレワークさせた方がオフィスに通わせるよりもコストが浮いていいのではないか?」と思うようになっているかもしれない。つまり、人々は自粛から解放されても、長い自粛によって考え方が大きく変化しているかもしれない。
そうなるのかどうか分からないが、自粛が長引けば自粛の中で新しいライフスタイルを生み出さなければならないので、2020年から人々のライフスタイルや考え方や価値観が大きく変わっていることもあり得る。
アフターコロナ(コロナ後)の時代は、今までとはまったく違う世界になっているかもしれないので、私たちは今までの常識に縛られず、新たな時代に適応していく能力が求められる可能性がある。
今までの生き方と発想しかできない人は取り残され、新しい時代に適応した人が次の時代の寵児になっていく「変わり目」に私たちは立っているということだ。あなたはこの「変わり目」を意識して自分を変えなければならない。
さもなくば、コロナが収束しても時代に殺される。
