今回が「恐慌」ならば、1930年代の「世界大恐慌」と同じ道筋を辿るのか?

今回が「恐慌」ならば、1930年代の「世界大恐慌」と同じ道筋を辿るのか?

今、世界各国の中央銀行や政府は金融緩和と財政出動などによって経済を下支えしようとしており、金融市場に莫大な真水をじゃぶじゃぶと流し込んでいる。これを好感して株式市場も上昇している。株式市場的には「もう危機は去った」ような楽観論もあって、金融緩和による救済は株式を大量に持つ富裕層に恩恵をもたらしている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

都市封鎖(ロックダウン)で得られる3つの効果

世界中で行われている都市封鎖(ロックダウン)、あるいは日本で行われているような緊急事態宣言は、中国発コロナウイルスの猛威を止める効果はある。しかし、問題を解決する効果はない。

それでも都市封鎖を行うのは、以下の手順でやると社会が正常化できると、理論的には「考えられる」からだ。

(1)都市封鎖を完全に行う。
(2)全員を検査して陽性者と陰性者を分ける。
(3)陰性者は働いてもらう。
(4)陽性者は完全に隔離する。

この手法によって以下の3つの効果が得られる。

(A)感染拡大を一時的に止めることができる。
(B)陽性者がいても社会を正常化できる。
(C)ワクチンができるまで時間が稼げる。

どこの政府も都市封鎖を1ヶ月をメドに考えていた。一見すると、この通りにやれば問題は解決するように思える。しかし、実際にやってみるとなかなかうまくいかず、都市封鎖の期間は延びている。あるいは、完全解除にならず部分解除になっている。

なぜか。

ルールを守らない人間はどこにでもいるし、検査は完璧ではないし、検査を受けようとしない人もいるし、陽性でも生活のために隠れて働く人もいる。さらに隔離された陽性者でも逃げ出す人もいれば、隔離そのものがうまくいかないこともある。

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世界経済は1930年代の大恐慌以来となるほど悪化?

都市封鎖をしつつも感染者の増加が止まらないので、各国政府は新たな問題に直面するようになっている。

急激な中小企業・小規模事業者の倒産と、失業率の増加と、金融緩和や財政出動による政府債務の悪化である。

全世界のすべての国が同時に危機に落ちるので、先進国も新興国も他国の支援をする余裕がなくなり、どこかの国の破綻が次々と連鎖する危機が発生する確率が高まっている。

世界経済はどれほど悪化してしまうのだろうか。

IMF(国際通貨基金)は、4月14日の時点で「世界経済は1930年代の大恐慌以来となるほど悪化する」と述べている。IMFが予測する具体的なGDP成長率は以下の通りだ。

アメリカ:マイナス5.9%
ドイツ:マイナス7.0%
イギリス:マイナス6.5%
カナダ:マイナス6.2%
日本:マイナス5.3%
スペイン:マイナス8%
イタリア:マイナス9.1%

これらの国以外は順調なわけではない。すべての国が直接的にも間接的にも中国発コロナウイルスによって経済的にダメージを受けているのだから、他も似たような状態になっていると考えて間違いない。

今、私たちが直面しているのはリーマンショックや東日本大震災どころではない未曾有の事態だということだ。

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ワクチンが流通するのは2021年春以後と考えるのが妥当か

今回の危機はパンデミックが引き起こしたものである。そうであれば、本当の意味で効果がある特効薬や治療薬が開発されれば問題は一気に収束する。

しかし、この特効薬や治療薬が「いつ登場するのか」については、まだ誰も分からないのだ。情報は錯綜している。

今ではすっかり信用を失ったWHO(世界保健機関)だが、4月14日の時点でこの組織は「ワクチンの開発が少なくとも12ヶ月程度で実現すると予想すべきではない」と述べている。

一方で、イギリスのオックスフォード大学の研究チームは「感染を8割抑えるワクチンを9月から実用化する」と言っていたりする。日本でも大阪府が国内の大学や医療機関と連携して9月からワクチンを実用化させると述べている。

モデルナ、イノビオ、J&Jなども9月までに一部が利用可能な状態に持っていくとアナウンスしている。ただ、9月というのは「一部で利用可能」と言っているだけで、製品化はやはり12ヶ月後となる。

他にも全世界でワクチン開発競争が起きていて70種類ほどの薬が研究・開発されているというのだが、有望な薬のほとんどは2021年がメドになっている。

こうした状況を見ると、ワクチンについては「9月あたりから一部投入され始めるが、本格的にワクチンが流通するようになるのは2021年の春あたり」と考えるのが今時点での状況判断であると考えられる。

とすれば、私たちは少なくとも9月頃まで、下手したら来年まで、延々と自粛だとか封鎖だとか外出規制などの制約を受け続けるということにある。

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多くの人が「今回の事態は恐慌だ」と言っている

今、中央銀行や政府は金融緩和と財政出動などによって経済を下支えしようとしており、金融市場に莫大な真水をじゃぶじゃぶと流し込んでいる。これを好感して株式市場も上昇している。

株式市場的には「もう危機は去った」ような楽観論もあって、金融緩和による救済は株式を大量に持つ富裕層に恩恵をもたらしている状態だ。

しかし、実体経済が止まっていて失業者と困窮者が莫大に増えている局面になっており、企業の売上も利益も吹き飛んでいくのだから、ワクチンが開発されるまでの期間が長引けば長引くほど景気動向は不透明となり、突発的な悪材料が出やすくなる。

つまり、株式市場が単純に「V字回復」となるかどうかは未知だということだ。全世界の全企業が景気悪化に見舞われるのだから、常識的に考えると、2020年の株価は下がった分だけ戻すような楽観的なものには決してならない。

IMFも含め、多くの人が「今回の事態は恐慌だ」と言っているのだが、1929年の株式市場では株式市場では何が起きたのか。

1929年9月3日の最高値381.17ポイントから12月にかけて約48%も下落して、当時の有力銀行であったモルガン銀行、シティバンク、チェイス銀行等が買い支えて「いったん上昇していた」のである。

しかし、1930年4月以後は株式市場は底なしの下落局面に入っていき、「株式市場は死んだ」と言われるようになり、以後は第二次世界大戦に突入していく。

今回が「恐慌」だというのであれば、1930年代の「世界大恐慌」と同じ道筋を辿る可能性もゼロではないということを私たちは心の片隅に置いておく必要がある。

1929年を彷彿とさせる株式大暴落が2020年2月に起きたが、アメリカのFRB(連邦準備制度)は約250兆円を市場にぶち込み、ジャンク債を買い込むまでの買い支えを行って株式を安定化させた。

もし今回が1930年代と同じ運命を辿るのであれば、ここから地獄の「下げ」が本格的に始まるということになる。そうなるともならないとも言えない。歴史が繰り返すかもしれないし、繰り返さないかもしれない。

何が起きても不思議ではないのが今の状況だ。これから、どのように生きるのか。私たちは立ち止まってよく考える必要がある。

『世界大恐慌――1929年に何がおこったか(秋元 英一)』

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