新型コロナウイルスの問題が落ち着いたら、最も困難に落ちているのは普通の人

新型コロナウイルスの問題が落ち着いたら、最も困難に落ちているのは普通の人

一般国民の多くは株式を買う余裕もなければ興味もない。「自分の給料を貯金する」というのが一般国民の発想であり、株式という金融資産を保有して資本主義に「乗る」という発想はまったくない。しかし、政府がやっていることを見て欲しい。政府は「利下げ」しているのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

リーマン・ショック並みか、それ以上のインパクト

新型コロナウイルスが株式市場にもたらした衝撃は「コロナショック」として歴史に刻まれることになる。このコロナショックは、場合によってはリーマンショック以上の危機になるかもしれない。

2020年3月15日。西村経済再生担当相はコロナショックを「リーマン・ショック並みか、それ以上」のインパクトであることを述べた。

アメリカの株式市場は2月19日からマイナス20%以上の下げ幅となっているので、まさに「暴落」と言っても過言ではない状態である。たった16日でマイナス20%以上の暴落なので、相当なインパクトだったことが分かる。これを受けてFRBは二度の利下げを行っている。

3月3日 0.5%の利下げ
3月15日 1.0%の利下げ

さらに、3月15日の発表では7000億ドル(約74兆円)規模の量的緩和も同時に行うことも同時に述べられている。これによってFEBは株式市場を買い支えるつもりだ。しかし、これで市場の情勢が落ち着くかどうかは未知数だ。

新型コロナウイルスはまだ収束したわけではないし、これから何を引き起こすのかは誰にも分からないので、危機はこれで終わったわけではないからだ。

パンデミックによる国の分断とグローバル社会が構築してきたサプライチェーンの寸断は、実体経済に想像以上の問題を起こしている。金融経済を利下げと量的緩和で支えても、実体経済が崩壊していくのであれば金融市場は落ち着くはずもない。

だから、利下げと量的緩和が即、問題の解決になるとは考えない方がいい。

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金融市場に約74兆円という莫大なカネが流れ込んでいく

常識的に考えると、コロナショックによる市場の動揺は、新型コロナウイルスの問題が解決するのが確認されてから戻る性質のものである。

ウイルスが蔓延していてパンデミックが引き起こす問題が何も解決しない限りは、どれだけFRBが量的緩和しようが市場は強気にならないだろう。

ただ、問題が解決した瞬間に壮大なバブルが発生する可能性があるので、投資家は相場から降りるよりもむしろ虎視眈々と「飛び乗る」機会を窺っているというのが実情ではないか。

状況はどうなるのか不明だが、アメリカ政府は金融市場を何とか落ち着かせ、強引に戻そうとしている姿勢は2020年3月15日にメッセージとして出された。

ただ、金融緩和で金融市場に約74兆円という莫大なカネが流れ込んでいくのだが、これが実体経済にトリクルダウンされるかと言われればどうなるか分からない。

2008年のリーマンショック時にもFRBは量的緩和を繰り返して金融市場を助けたのだが、その陰でアメリカでは貧困格差が凄まじいものになっていった。

フォーブスの長者番付けに乗るような資産家や事業家の資産は10兆円を平気で超えるような額になり、一方で社会の底辺ではホームレスが57万人に至るほどの惨憺たる様相になってしまっていた。

リーマンショックで起きたこの極度の格差は、コロナショックが終わった後もまたより極度の格差となって現れることになるだろう。つまり、政府がばら撒いた量的緩和というカネは、金融市場にアクセスできる資本家がごっそりと持っていくのである。

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一般国民は「奪われている」ということに気づいていない

言うまでもないが、一般国民の多くは株式を買う余裕もなければ興味もない。「自分の給料を貯金する」というのが一般国民の発想であり、株式という金融資産を保有して資本主義に「乗る」という発想はまったくない。

しかし、政府がやっていることを見て欲しい。

政府は「利下げ」しているのである。日本もそうだが、アメリカもほぼゼロパーセントまで利下げが進んでしまった。

利下げがこれだけ進んだというのは、一般国民は貯金をしてもまったく利息がもらえないということを意味している。本来であれば定期預金したら2%だか3%だかの利息が付いてくれれば、国民の資産も実は増えていく。

1000万円の貯金があったら、毎年30万円の利息がもらえるのだからこれは小さい額ではない。

日本政府は「年金だけだと足りないので2000万円貯めろ」と提言して国民に「そんなに貯められない」と袋叩きにされて撤回したが、2000万円で3%の利息だと年間60万円がリスクなしで入って来ることになる。

すると、2年で120万円になり、3年で180万円になる。これは小さい額ではない。

利息がゼロであるというのは、要するに一般国民は「奪われている」ということを意味している。しかし、貯金は額面が減っていないので「奪われている」という意識がなかなか起きないので国民は目くらましされている。

一方で、株式資産を持つ資本家たちは株価が下がった優良企業の株式を拾って、4%にも5%にもなる配当をもらいつつ、量的緩和による株価の上昇というキャピタルゲインも手に入れてダブルで儲かることになる。

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本当に危険なのは株式市場ではなく普通の人たちの生活

コロナショックは、それが収束するのがいつになるのか分からない。しかし、遅かれ早かれ特効薬が開発されて問題は収束していく。しかし、収束した時は間違いなく「格差がまた広がっていた」という光景になるのがまざまざと見える。

今回の新型コロナウイルスは、もしかしたらリーマンショック以上に格差を広げるのではないかという懸念すらもある。なぜなら、実体経済のダメージは金融市場の比ではないからだ。

ありとあらゆる業種は経営的に大きなダメージを負っているので、自らが生き残るために従業員の賃金を下げたり、休業を取らせたり、場合によってはリストラせざるを得ない状況に追い込まれていく。職を失ったり、賃金が下がった人たちが増えるのである。

実際、新型コロナウイルスが深刻化していったのは1月の中旬からだったが、たった2ヶ月ですでに非正規雇用者やフリーランスの人たちの収入が危険なことになっているというのが報告されている。

すでに彼らは2019年10月から取り入れられた消費税10%によってダメージを受けている。

このダメージは、2019年のGDPの第四四半期決算で実質GDPどころか名目GDPまで大きなマイナスになっていることでも窺うことができる。あるいは、景気動向指数が2020年の1月に入ってから40%を切ってしまったことでも分かる。

NHKは非正規労働者の労働組合などで作る「全国ユニオン」に、「解雇された」「休業を強要された」「賃金が減った」という声が殺到していると報道している。しかし、状況はここからさらに悪くなっていくのである。

株式市場の暴落は目立つので人々の目はそこに集中しているのだが、本当に危険なのは株式市場ではなく普通の人たちの生活の方にある。

『傍若無人なアメリカ経済 アメリカの中央銀行・FRBの正体(中島 精也)』

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