イノベーションの進化に遅れて苦しむ人たちの存在は「意図的」に忘れ去られる

イノベーションの進化に遅れて苦しむ人たちの存在は「意図的」に忘れ去られる

どれだけITの重要性が増しているからと言って、誰にが明日からプログラマーやシステム・エンジニアに転身できるわけではない。仮に職業訓練を受けても、適性があるかどうか分からない上に、転身できる保障があるわけでもなく、才能が開花するわけでもない。むしろ、慣れた仕事で何とかならないのかと考えるのが人間だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

会社を辞められずに追い込まれる理由は複合的

2020年からいよいよ「5G」も導入が進むようになり、通信のイノベーションがさらに新たなITのイノベーションを生み出す。

4Gがスマートフォンというイノベーションを瞬く間に広げて社会を再構築したように、5Gも何らかの新しいイノベーションを生み出すことになるのは必至だ。それは、もはや確定された未来でもある。

そうであれば、誰もが「超高度情報化社会」に適応するためにITリテラシーを身に付けていけばいいのだが、誰もが揃って新しい時代に適応できるわけではない。何の問題もなくそこに飛び込める人もいる一方で、取り残される人も当然出てくる。

スマートフォンの時代になっても、相変わらず3G時代の遺物である折り畳み式のケータイ(フィーチャーフォン)を使い続けている中高年や高齢者の姿を見ても分かるはずだ。

今やインターネットがなくては生きていけない時代なのだが、この時代になっても「別にインターネットは必要ない」と言って絶対にインターネットに近づかない高齢者もいる。

紙の書籍や新聞はもう古臭いものになっているのに、中高年や高齢者はいつまで経っても紙の書籍や新聞にしがみついているし、キャッシュレスの時代になってもまだ「紙幣しか信用できない」と言っている人もいる。

しかし、今どきスマートフォンもインターネットもできない人は絶望的なまでに「取り残されている人」であるというのは言うまでもない。高齢層なら仕方がないとしても、中高年も取り残されてしまった人がいくらでもいる。

これは仕方がないことでもある。世の中が変わったからと言って、誰もが変化に適応できるわけではないからだ。

必ず、取り残される人が出てくる。そして、彼らが追い詰められて「社会問題化」していくことになる。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

職種を代えてうまくやっていけるほど器用ではない

企業がOA化(コンピュータ化)したとき、管理者の多くはパソコンのキーボードを打つことすらできなかった。その時代は、それでも良かった。部下に命令して書類を作らせれば良かったからだ。

しかし、時代はさらに急激に進んでいく。経営者がIT技術について無知であったら、それはもはや社会を正しい方向で意志決定できなくなっていることを意味する。当然のことながら会社は傾いていく。

今、生き残って成長している企業はすべてITを取り込んでいる。ITはもはや必須なのである。企業が様々な情報をコンピュータ上で行うようになり、社内ネットワーク(イントラネット)によって意思決定・周知・分析までを行う時代になった。

インターネットがビジネスで最も重要な要素となり、インターネットを取り巻くイノベーションが会社を変えるようになった。これは、「5G」が普及すると、さらの加速していくことになる。

「4G」の時代にスマートフォンが爆発的流行して時代を変えたように、「5G」の時代にも新たなイノベーションが生まれてくるのだ。

今は何かの仕事をしようにも、ITの高度なリテラシーがいじれないとまったく仕事にならない。当たり前だが、今はもう「パソコンが操作できる」くらいでは何の意味もない。それは「文字が書ける」と言っているのに等しい。

高度なITリテラシーがあって、そこでビジネスを構築・展開できる人材でない生き残れないのである。

しかし問題は、誰もがITに対して適応性があるわけではないということだ。人には多種多様な個性がある。「コンピュータがどうしても合わない」「デジタルが合わない」という人もいる。

彼らはITが自分の感性が合わないのだから、適応のしようがない。

【ここでしか読めない!】『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』のバックナンバーの購入はこちらから。

自分はできないことを強要している社会学者や大学教授

ITを中心にして、時代は衰退産業と成長産業をふるいにかけている。衰退産業は細々と生き残るのかもしれないが、そこにいると企業も従業員もどんどん首が絞まっていく。真綿で首を絞められるように追い詰められていく。

そうすると、どこかの社会学者だか大学教授だかがメディアに出てきて、したり顔で「衰退産業にしがみつくな」「成長産業に就職しろ」「新しい技術を覚えろ」と簡単に言う。

しかし、人間はそれほど器用にできているとは限らない。人にはできることと、できないことがある。

それこそ社会学者に「お前がやっていることは役に立たないから、明日からネットワークエンジニアになれ」と言わたとき、社会学者は明日からネットワークエンジニアになれるのだろうか。

いや、「職種が違う」とか「他の職業は考えていない」とか言い出してネットワークエンジニアにはならないだろう。

テレビに出て偉そうに適当なことを言っている大学教授もそうだ。「お前は下らないことしか言っていないから、もう明日からプログラマーになってPythonでプログラミングしろ」と言われて、プログラマーに転身できるだろうか。

「大学教授の俺様はそんな仕事に就く理由がない」とか言って激怒するだろう。要するに、自分たちは「成長産業に就職しろ」「新しい技術を覚えろ」と簡単に言うのだが、自分はできないことを強要しているのだ。

「今の業界を辞めて成長している業界に移れ」と言われても、そんなに器用なことができる人間ばかりではないということだ。

プログラマーが求められていると言われても、誰もがプログラマーになれるわけではない。そんな難しそうな仕事は死ぬほど嫌だという人は大勢いる。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

社会は光に焦点を当てるが、影は見向きもしない

若年層なら職種を代えて転職するのは何とかなるかもしれない。しかし中高年にもなると、理屈で考えても現実には自分を自分で配置転換させることはうまくできない。

世の中には稀に「新しい自分になる」ことが楽にできる人も存在するのは間違いない。しかし、ほとんどの人間は自分が今まで生きてきた職業やスキルを捨てられない。

そのため、どれだけITの重要性が増しているからと言って、誰にが明日からプログラマーやシステム・エンジニアに転身できるわけではない。

仮に職業訓練を受けても、適性があるかどうか分からない上に、転身できる保障があるわけでもなく、才能が開花するわけでもない。むしろ、慣れた仕事で何とかならないのかと考えるのが人間だ。

いくらIT産業がこれからも成長の中核になるとしても、誰もがそこに飛び込めるわけではないのだ。たまたま、時流に合った職業や職能(スキル)のある人はいいが、そうでない人も山ほどいる。

そして仕事ができなくなり、それでも新しい時代に適応するようにと無理難題を言われ、ついていけず、やがて身体を壊して経済問題を抱えて追い込まれていく人がでてくる。

社会が変わると、新しい社会に適応して水を得た魚のように活き活きと活躍する人もいる一方で、取り残されてどうにもならなくなってしまう人もいる。

今もすでに超高度情報化社会だが、5Gによって加速される社会変革によって取り残される人も多くなっていくはずだ。

社会は光に焦点を当てるが、影は見向きもしない。イノベーションの進化に遅れて苦しむ人たちの存在は「意図的」に忘れ去られる。ついていけなくなった人は放置される。そして、追い詰められて鬱病になっても自己責任だと突き放される。

そして、新たな時代が新たな社会問題となっていくのだ。

『5Gでビジネスはどう変わるのか(クロサカタツヤ)』

鈴木傾城のDarknessメルマガ編

CTA-IMAGE 有料メルマガ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」では、投資・経済・金融の話をより深く追求して書いています。弱肉強食の資本主義の中で、自分で自分を助けるための手法を考えていきたい方、鈴木傾城の文章を継続的に触れたい方は、どうぞご登録ください。

ハイテクカテゴリの最新記事