人工知能によって文章が大量生産され、コモディティ化していく未来を自覚せよ

人工知能によって文章が大量生産され、コモディティ化していく未来を自覚せよ

最適なアルゴリズムが与えられたら、人工知能は人間に変わって適切な文章を大量に生産できる。人工知能のアルゴリズムが強化され、バージョンアップされ、洗練されていけば、文章の大半は人工知能が書いたもので埋まることになる。そうなれば、「文章で書かれた成果物」は完全にコモディティ化する。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

文章は「工場で作られる大量生産品」に

企業はすでに人工知能によって書かれた記事を使っている。株価の動き、企業の決算サマリー、スポーツの勝敗、天気予報などの、決まった形式でデータが毎日違うルーチン的なタイプの記事は人工知能に任せる方が正確で早かったりする。

そして、それはとっくの前に実用化されている。

AP通信はオートメイテッド・インサイト社の「ワードスミス(Wordsmith)」というソフトを導入しているのだが、2014年に取り入れられたこのソフトは、3ヶ月に4300本もの記事を作成するようになっている。

ワシントンポストは「ヘリオグラフ(Heliograf)」という自社開発の人工知能を使って、年間850本の記事を量産し、知事選やスポーツの試合結果などをツイッターにアップするボットも人工知能に任せるようになっている。

ブルームバーグでは「サイボーグ(Cyborg)」と呼ばれる記事が財務諸表を分析して、ニュース記事を大量生産している。ロイターはもっと進んでいて、ツイッターからニュースを「発見」して、それを元に記事を自動作成するシステムを備えている。

日本では、日経新聞が企業発表の要約記事を人工知能が作成する「AI記者」をスタートさせている。「業績」「要因」「見通し」に分けて、前年比との分析をも述べられた記事を10秒足らずで制作する。

日経ではさらにその記事をウェブにアップするところまで自動化している。記事は完全に自動で「大量生産」されるようになってきているのである。

人工知能による記事の「自動化」はこうしたところから始まって、バージョンアップを繰り返しながら、徐々に独自の考察記事や掘り下げ記事にも浸透していくことになる。

人工知能による記事作成の効率は人間の10倍や20倍どころではないはずだ。すでに、あなたが読んでいる記事のいくつかは、あなたが気が付かないうちにコンピュータが自動作成したものになっている。

文章は「工場で作られる大量生産品」に向かっている。

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無限に作品を生み続けることができる

「アーティクーロ(Articoolo)」というブラウザ上で動くクラウド型の記事作成ツールですらも、すでに欧米では一般化している。キーワードをいくつか入力すると、そのキーワードを元に人工知能が「ほんの数分」で記事を作成してくれる。

日本でも、こうしたものを使って英文記事を自動作成し、それを翻訳することでオリジナルの記事として量産しているサイトもあると聞いた。

このアーティクーロ(Articoolo)は最近、日本語版をベータ版として出しているのだが、こうしたものが実用化されて一般化すると、誰でもボタンひとつで大量の記事を作成することができるようになる。

定型文的なものであればともかく、「小説」のような人間の感情に訴えるような文章は、決してコンピュータが書けるようになるはずがないという思いは人間側にあるかもしれない。

しかし、すでにコンピュータは「小説」すら書けるようになっている。

小説には「物語構成」がいくつかある。その構成をコンピュータでアルゴリズム化する。そして、インターネットのビッグデータから言葉を抽出して、小説をあっと言う間に制作してしまうという仕組みになっている。

インターネットからデータを持ってきて組み立てるのだから、著作権に抵触するような文章も出てくるのではないかという危惧もある。

しかし、そのあたりも考えられていて、著作権を擦り抜けるための言葉の言い換えのプログラムやアルゴリズムもある。

人工知能が作った文章がどれだけ人間を感動させることができるのかは分からない。しかしアルゴリズムが洗練されていけば、いずれ人間が書いたものを超えるような小説も生まれても不思議ではない。可能性はゼロとは言えない。

日本ではまだこのようなソフトウェアが商業化ベースで売れているという話は聞かないが、いずれどこかの企業が参入して商品化する。そして、こうしたアルゴリズムで文章を生み出す流れが定着すれば、それが大きなパラダイムシフトになる。

そのうち人間が書く以上の文章が世の中に満ち溢れるばかりか、誰でも自分好みの小説を「自分で作って自分で読む」ような時代になっていく。つまり、記者から小説家まで「物を書く職業」は人工知能に淘汰されていく時代に入る。

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高度にプログラム化された「人工知能」

人工知能が自動的にアルゴリズムに則って文章を作り上げていくという作業は、人工知能が意志を持ってやっているのではなく、単にプログラム化された計算処理を行っているだけに過ぎない。

しかし、そのアルゴリズムが高度化すると、まるでコンピュータ自体が「知能」を持っているかのように見える。

たとえば、最近はアップル、グーグル、アマゾン、マイクロソフト等が発売するスマートスピーカーも広く売れるようになっているのだが、このスマートスピーカーは人間の話した言葉を理解して音声で答えを返すようになっている。

その精度は非常に高く、実用的だ。もう機械に話しかけて何か答えをもらうというのは、普通に行われる日常の光景となって奇異な光景ではなくなったのだ。

グーグルに至っては「グーグル・デュプレックス(Google Duplex)」で、人工知能が勝手に相手に電話して人間のように会話しながら予約を取るようなシステムをも発表している。

コンピュータが誰かに電話して的確に予約を済ませるのだから恐ろしい。

逆に言えば、これからの時代に私たちが受ける電話の相手は、場合によっては人工知能かもしれないのだ。そして、最初から最後まで電話の相手が人工知能だと気づかないまま、私たちは受け答えしているはずだ。

もちろん、こうした話しかけに答えるスマートスピーカーも、別にそれ自体が知能を持って答えているわけではない。スマートスピーカーに埋め込まれたソフトウェアが、アルゴリズムに則って処理しているだけだ。

しかし、高度化するとコンピュータが「知能」を持っているようにしか見えない。

いずれ、店頭の受付・レジ・対応・誘導・注意喚起・セキュリティ・チェック等はこうした「人工知能」が担うようになるのは時間の問題である。

もうとっくの前に、製造工場ではロボットが文句ひとつ言わずに正確な作業をこなし、倉庫でもやはりロボットが注文された品物を捜して持ってくるような作業をこなしている。あたかも高度にプログラム化されたロボットが、意志を持っているかのように振る舞うのである。

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もう文章はコモディティ化している

インターネットという巨大なビッグデータの中から、人工知能のアルゴリズムが的確に文章を抽出できるようになると、それはあたかも人工知能が知能を持っているかのようになる。

私たちは、文章を書くというのは人間にしかできないと無意識に思い込んでいた。文章を書くのは人間の知性が生み出すものであり、それは「人間にしかできない領域」だと思っていた。

しかし、もうその認識は改めなければならない時代がやってきている。

最適なアルゴリズムが与えられたら、人工知能は人間に変わって適切な文章を大量に生産できる。人工知能のアルゴリズムが強化され、バージョンアップされ、洗練されていけば、ニュース記事の大半は人工知能の記事で埋まることになる。

内容の「深み」や「掘り下げ」はどれだけ追求できるのかを疑問視する人もいるが、材料さえあれば人工知能はそれを取り入れてくる。人工知能が私たちの感情を揺さぶるようになる。

インターネットが誕生して、今も「超高度情報化社会」と言われている。人工知能が無限に文章を生み出すような時代に入ったら、今まで以上ものスピードで情報は増えていくのだ。

もはや世の中に溢れる文章の大半は、人工知能が作り上げた文章になっていても不思議ではない。

そうなれば、「文章で書かれた成果物」は完全にコモディティ化する。コモディティ化するというのは、あまりにも大量に安易に作られすぎて、どんどん無価値に向かって収斂していく現象を指す言葉である。

記事でも小説でも、文章で表現されたものは誰でもボタンひとつで無限に生み出せるのであればどうなるのか。

それこそ自分の読みたい記事があれば、いくつかのキーワードを打ち込んで「作成」ボタンを押せば、自分の読みたい記事や小説を、自分がボタンを押して作成できることになる。

その良し悪しはともかく、文章を書いて生きているジャーナリストや小説家や作家は、もはや文章で生きていけない時代がやってきているということを自覚すべきである。もう文章はコモディティ化に向かって突き進んでいる。

人工知能がもたらす時代の変化を甘く見るべきではない。

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