HPがリストラに追いやられたのは必然だった。時代は「脱・紙依存」を加速させる

HPがリストラに追いやられたのは必然だった。時代は「脱・紙依存」を加速させる

紙はかさばる。紙は情報が遅い。紙は検索できない。紙は資源の無駄になる。スマートフォンは常に人々の手の中にあるので、人々はスマートフォンですべてを完結したいと思うようになっている。だからこそ、スマートフォンはすべてを取り込んで、紙媒体のビジネスモデルに依存していた企業を一気に時代遅れにしてしまった。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

スマートフォンが「紙文化」を駆逐した

2019年10月3日。アメリカのHP(ヒューレット・パッカード)は、今後3年間で7000人から9000人の従業員をリストラする計画を発表している。HPはパソコンとプリンターが主力の企業なのだが、パソコンどちらも減益に見舞われていた。

ただ、パソコン部門はかろうじて増収だったものの、プリンター部門は減収減益なので事業に問題が起きていることが分かる。

HPのプリンターに問題があって減収減益になったのではない。「プリンター部門」そのものが時代の潮流に取り残されつつある事業になっているのだ。これについては、家庭用インクジェット市場を抑えているエプソンを見ても分かる。

エプソンの売上高はここ数年は横ばい状態が続いているのだが、その要因のひとつとしてエプソンが力を入れている家庭用インクジェットプリンタの売上げが減少していることが上げられる。

家庭用インクジェットプリンタの売上が落ちるようになったのは、2013年頃からである。何が原因なのか。

言うまでもなくスマートフォンの爆発的普及である。

写真撮影は一眼レフやコンデジから、スマートフォンで撮るのが当たり前になった。その結果、人々は大量の写真をスマートフォンで見るようになり、もはや紙で印刷して残すという「面倒臭いやり方」を捨てたのだ。

長らく人々は「脱・紙依存」を望んでいた。スマートフォンが「紙文化」を駆逐していったのである。

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スマートフォンはすべてを取り込んだ

スマートフォンは今までの企業や人々の行動のあり方をことごとく変えて「文明の再構築」を行っている。

すでに新聞社も出版社も「紙依存」では生き残れないということがはっきりしているのだが、これは人々が紙の新聞や雑誌や書籍を読むよりも、スマートフォンで読むことを好むようになったからでもある。

紙はかさばる。紙は情報が遅い。紙は検索できない。紙は資源の無駄になる。スマートフォンは常に人々の手の中にあるので、人々はスマートフォンですべてを完結したいと思うようになっている。

だからこそ、スマートフォンはすべてを取り込んで、紙媒体のビジネスモデルに依存していた新聞社・雑誌社・出版社などを一気に時代遅れにしてしまったのだ。

そして、スマートフォンはカメラ機能をもどんどん高機能・高画質化させていき、今やそこらのコンデジと引けを取らないほどの画質を誇るようになっていった。場合によっては一眼レフとも並ぶようなクオリティに到達しつつある。

もちろん、まだまだ一眼レフや高級コンデジの方が自然で美しい写真が撮れる。しかし、そのクオリティを求めるのはプロフェッショナルな専門家だけで、もはや素人はスマートフォンの写真で十分に満足できるようになっている。

アップルは2019年9月20日にiPhone11を発売したのだが、超広角やナイトモード機能の性能は「ついにスマートフォンでここまで写真が撮れるようになったのか」と人々を驚嘆させるものだった。アップルはまたもや時代を変えたのだ。

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このスマートフォンの画質の向上はAI(人工知能)が深く関わっている。そのため、人工知能の向上と共に、画質がさらに良くなっていくのは約束されている。いずれスマートフォンの画質はコンデジや一眼レフと並び、それを超えていく可能性すらもある。

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スマートフォンは「脱・紙依存」を加速させた

スマートフォンで撮られた美しい写真は、やはりスマートフォンの美しい画面で見ることもできるし、タブレットやパソコンで見ることもできる。スマートフォンは大量に写真が撮れる上に、撮った写真は主にSNSに上げるので、紙で残す人は少なくなった。

女性の中には美しく撮れるまで一日に100枚近く自撮りする人すらもいる。それを紙に印刷しても見るのは自分だけだ。友人に見せるとしても、紙で印刷したものを見せるよりもSNSに上げたものをリンクで見てもらう方が早い。

SNSに上げたら世界中の人たちが自分の写真にアクセスしてくれて、しかも「いいね」という賞賛さえ与えてくれる。そうであれば、もはや彼女たちには紙で印刷するメリットなどまったくない。

写真を趣味にしている男性も、大量に撮った写真はすでにパソコンやタブレットやスマートフォンの「モニタ」で閲覧するのが普通になっている。

そうであれば、今まで写真を印刷するために使っていたインクジェットプリンタはどんどん使わなくなっていく。

写真だけでなく、一般的な書類も今は紙で印刷するのではなく、モニタ上で閲覧するようになっているわけで、ますますインクジェットプリンタの出番はなくなっている。情報は紙に出力する時代ではなくなってしまったのだ。

企業も「脱・紙依存」をどんどん推し進めている。重要書類はPDFで作成され、それがクラウドで保管されるようになっていった。

このような「脱・紙依存」をすることによって経営者や社員のフットワークは軽くなり、それがノマドやコワーキングという新たなスタイルをも生み出すようになっているのだ。

そう考えると、HPのプリンター部門が減収減益になって7000人から9000人の従業員をリストラしなければならなくなったという現実の裏側にあるものが見えてくるはずだ。スマートフォンは「脱・紙依存」をどんどん加速させた。

そして、いよいよプリンターをも駆逐するようになっている。裏側で起きているのは、そういうことだったのだ。

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次の時代には淘汰される人

「脱・紙依存」は金融の分野にも押し寄せている。日本もようやく「紙幣や小銭」から脱却しつつあり、現金からキャッシュレスの時代に一歩を踏み出した。

今でも頑なに物理的な現金から離れられない時代遅れの高齢者がいるのだが、来たるべきキャッシュレス時代は、こうした高齢者が生存できる「場」をどんどん狭めていくことになるはずだ。

「紙幣や小銭」は流通に手間がかかり、合理的ではない。それよりも、スマートフォンで決済をした方が早く確実だ。

そのため、日本でもスマートフォンがなければ買い物すらもできないような時代に入っていき、紙幣は近い将来は完全に消え去っていくことになる。すべてはスマートフォンに集約されていくのである。

将来的にはスマートフォンの機能がやがて時計や眼鏡や何らかのウェアラブルに取り込まれていく可能性もあるが、いずれにしても「脱・紙依存」の流れは決して覆ることがない。

それが未来の姿になる。

そうれあれば、私たちがこれから注力しなければならないのは、いかに「脱・紙依存に自分を慣れさせるか」という点である。時代の流れも、ビジネスのチャンスも、求められる技能も知識も、すべてはスマートフォンとその周辺の技術になるのだから当然の話だ。

かつて文明は紙に依存してきたが、今後の文明はインターネットとスマートフォンに依存していく。

だからこそ、時代に付いていくためには、誰よりも早く「脱・紙依存」を成し遂げていなければならないし、誰よりも深くインターネットとスマートフォンの知識や技能を手に入れておかなければならない。

紙で本を読んで、紙の紙幣を使って、何かを紙で印刷しなければ気が済まない人は次の時代には淘汰される。こだわってもいいが、主流から外れて生き残れない。生き残るためには、インターネットとスマートフォンに没頭すべきだ。

時代はこちら側にある。

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