職業に貴賎はないが「誰にでもできる仕事」を続けていると泥沼に落ちる

職業に貴賎はないが「誰にでもできる仕事」を続けていると泥沼に落ちる

日本では非正規雇用が2000年頃から急拡大し、働いても働いても生活が楽にならずに追い込まれる人が増えてきた。総務省は「1990年に881万人だった非正規雇用者数は、2014年に1962万人と2倍以上になりました」と統計を出している。

そして、この非正規で働く人の75%が年収200万円未満である。

200万円だと、どんなに働いても生活は苦しいままである。こういった人たちのことを「ワーキングプア」と呼ぶが、これはアメリカから直輸入された言葉だ。必死で働いgても生活ができないのは、言うまでもなく賃金が極度に低いからだ。

低賃金労働者というのは真っ先に挙げられるのはファーストフードの店員や、ピザの配達員だ。あるいは、ウェイターやウェイトレスや皿洗い等の外食産業に関わる人たちもまた低賃金の代表でもある。

それ以外にも工場の組み立て工員に見られる単純労働、清掃作業員、レジ係も、どんなに真剣に働いても賃金が低くて生活が豊かになることはない。

こういった労働者は失業者とは違うので、「仕事がないよりはマシ」かもしれない。しかし、病気やリストラや職場の倒産によって、翌日から生活破綻の可能性もある。どんなに必死で働いても、底辺ギリギリである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

アメリカはワーキングプアを量産する社会

アメリカの貧困層は5000万人を超えている。先進国で貧困層が5000万人とは尋常な数ではない。この5000万人の多くが前オバマ政権で下の生活レベルに落ちていき、ドナルド・トランプ大統領の時代になっても浮上していない。

最初は貧困層であっても努力や才能で成り上がることを「アメリカン・ドリーム」と言っている。

ところが、このアメリカン・ドリームが曲者で「底辺に落ちた人間は頑張らなかった人間なのだから、そういった人間のために福祉にカネを注ぎ込むな」という風潮が定着して弱者が放置されたままになっている。

実際のところアメリカン・ドリームをつかめる「栄光の人」はとても少なくて、多くの人は逆にアメリカン・ナイトメア(アメリカの悪夢)の方に落ちているというのは統計を見ても分かる。

アメリカの青少年の貧困率は約25%でOECD平均の14%よりもはるかに高い。

2019年7月の株式市場の最高値更新を見ても分かる通り、アメリカの投資家や事業家は空前の利益を享受しているのだが、株式とはまったく何も関係ない国民の多くは追い込まれたままである。

この景気回復で雇用は増えているのだが、その雇用の多くが最初に挙げたファーストフードの店員のようなものばかりであり、これからも成長が見込まれる職業もまた、こういった低賃金のものばかりだ。

つまり、アメリカはワーキングプアを量産する社会になっており、貧困層は貧困から抜け出せないまま人生を終える可能性が高まっている。

確かにアメリカン・ドリームをつかめる人は少数であっても存在するから、その理想論は嘘ではない。宝くじは買っても一等が当たらないが、それでもどこかで当たっている人がいるのと同じである。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

世間はその仕事を評価していない

資本主義社会の中ではすべての企業が競争に晒されるのだが、競争に打ち勝つには商品やサービスの価格は常に切り下げられる方向に向かう。

それはすなわちコストの削減をするということであり、コストの削減のためには人件費の削減をするのが最も効果的なアプローチになる。

要らない人員を切り捨て、給料が下げられれば出費が減るので、その分だけ商品やサービスの価格は安くすることができるようになる。

だから、誰にでもできる仕事であるウェイトレス、皿洗い、レジ係、工場の単純労働、清掃員、警備員、小売り店の販売店等の仕事はどんどん最低賃金に近づき、場合によっては最低賃金以下の賃金に落ちていく。

だから、働いても働いても生活は楽にならず、黙って自分の手を見つめて「どうなっているのだ」と呆然とするワーキングプアの人生に落ちてしまう。

職業に貴賎はないが、誰にでもできるワーキングプアの仕事というのは価値が非常に低く、世間はその仕事を評価していない。つまり、「スキルのいらない、つまらない仕事」であると思われている。

もちろん、皿洗いにもスキルが要るが、そのスキルは世の中に重要なスキルではなく、言わば「時代遅れのスキル」と世間は見なす。

「スキルがない」「あっても時代遅れ」というのは、資本主義の社会では価値がない。それがゆえに「時代遅れ」を続けていると、どんどん困窮してしまう。

しかし、今後はこうした仕事に就ける人も幸運だと思われる時代になるかもしれない。

アメリカではこのような仕事を「マックジョブ」と呼ぶ。マクドナルドの単純な労働を指して「マックジョブ」と呼ぶようになったのだが、最近ではマクドナルドも注文を機械化するようになりつつあり、低賃金者の就いていたマックジョブも減っていくことが予測されている。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

「時代遅れ」の仕事では、いずれ窮地に

ところで、マクドナルドが注文の機械化に着手したのは、マクドナルドが時代を読んで行ったというよりも、ある出来事がきっかけだった。それはファストフードチェーンの従業員たちの賃金引き上げのデモである。

最低賃金を引き上げろと言われて企業側・経営者側は真っ向から反対、結局これが注文の機械化を促進することになったのである。

資本主義の性格からすると、一時的に最低賃金への引き上げを成功させたとしても、最終的にはまた最低賃金以下の賃金に落ちていくことになるはずだ。「価値のないものは安い」というのは商品だけではなく、労働にも当てはまるからだ。

これはアメリカだけの問題なのだろうか。もちろん、違う。日本でも、欧州でも、中国でも、東南アジアでも、まったく事情は同じだ。

「誰でもできる仕事」「時代遅れ」の仕事を続けていたら、それ以上の発展性はまったくない。どんどん追い込まれて窮地に落ちていく。

日本では2019年10月には消費税が10%に引き上げられるのは約束されているが、賃金が上がるかどうかは約束されていない。安倍政権は経団連に賃金を上げるように異例の要請を行っているのだが、これに応えられるのは大企業のみだ。

中小企業では消費税10%によって売上が落ちてリストラや賃金下げが行われ、最低賃金を上げるどころではなくなる。

リストラされて、一刻も早く何かの職を見つけなければならない時、そこで見つかるのは「誰でもできる仕事」「時代遅れ」の仕事である可能性が高い。それは、貧困から抜け出せる足がかりにならない。

「誰でもできる仕事」は、やればやるほど貧困になっていく。なぜなら、「誰でもできる仕事」は価値がないと社会は見ているからだ。そして、価値がないものは叩き売られる。

そんなところで長く時間を潰していれば、どんどん人生を消耗してしまう。それが資本主義の残酷な一面だ。

自分の仕事が「誰でもできる仕事」であった場合、今はそうではなくても、いずれワーキングプアに落ちていく。やればやるほど貧困になっていく。これは必然的な世の中の動きである。(written by 鈴木傾城)

このサイトは鈴木傾城が運営し、絶えず文章の修正・加筆・見直しをしています。ダークネスを他サイトへ無断転載する行為は固くお断りします。この記事の有料転載、もしくは記事のテーマに対する原稿依頼、その他の相談等はこちらにメールを下さい。

ワーキング・プア(アメリカの下層社会)。自分の仕事が「誰でもできる仕事」であった場合、今はそうではなくても、いずれワーキングプアに落ちていく。やればやるほど貧困になっていく。これは必然的な世の中の動きである。

 

鈴木傾城のDarknessメルマガ編

CTA-IMAGE 有料メルマガ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」では、投資・経済・金融の話をより深く追求して書いています。弱肉強食の資本主義の中で、自分で自分を助けるための手法を考えていきたい方、鈴木傾城の文章を継続的に触れたい方は、どうぞご登録ください。

格差カテゴリの最新記事