スティーブ・ジョブズを失い、ジョナサン・アイブも消えていくアップル

スティーブ・ジョブズを失い、ジョナサン・アイブも消えていくアップル

アップルはその創業から現在まで、ハードウェアとソフトウェアが一体化したシンプルで使いやすい製品で時代を切り拓いてきた。

その製品は時には工業製品と思えないほど美しく、そしてソフトウェアは複雑なことを限りなくシンプルに見せることでユーザーを惹きつけてきた。

この類い稀な企業哲学を生み出したのが創始者スティーブ・ジョブズだった。

当初からジョブズの美意識は徹底されていたのだが、その美意識が会社を混乱させる元にもなっていて、1985年にジョブズはアップルから追放されている。

ジョブズを追放したアップルは経営的には安定したが、やがて美意識を失ったアップルは台頭するマイクロソフトにコンピュータ業界を席巻されるばかりとなり、結局は経営状態はどんどん悪化することになっていった。

倒産寸前にまで追い込まれてしまったアップルに、スティーブ・ジョブズは復帰したのが1996年だった。ジョブズはすぐにマイクロソフトと業務提携を結び、1998年には「iMac」を発売して一大ブームを巻き起こすことになった。

この「iMac」をデザインしたのが、ジョナサン・アイブだった。以後、アップルは「iPod」「iPhone」「iPad」「MacBook Air」と、次々とヒット商品を出し続けることになる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

未知の分野で成功したアップル

スティーブ・ジョブズは2011年10月5日に肝臓癌で亡くなっている。56歳だった。そして、2019年6月。今度はジョブズの美意識を継承した世界最強の工業デザイナーであるジョナサン・アイブが「今年中にアップルを去る」と発表することになった。

予兆はあった。ジョナサン・アイブと共に仕事をしてきたチームが2019年に入ってから次から次へと退社していたからだ。

今後、ジョナサン・アイブは新会社「LoveFrom」を立ち上げて、アップルと共に仕事をすることになる。しかし、アップル以外の仕事も受けるようになるのは必至であり、ジョナサン・アイブはアップルに注力することがなくなるのは間違いない。

アップルはすでに世界でも最強の時価総額を誇る企業となっている。ジョナサン・アイブが抜けたことで崩壊するような企業ではない。スティーブ・ジョブズやジョナサン・アイブが抜けても、アップルは走り続けていくだろう。

では、アップルは今後もまったく変わらないのだろうか。

いや、そんなことはない。アップルの当初の主力製品は「Macintosh」だった。ジョブスが復活してからもやはり主力製品は「Macintosh」だったが、やがてアップルは「iPod」や「iPhone」という未知の分野で成功するようになっていった。

この時点でアップルは「PCの会社」から「スマートフォンの会社」へと劇的な変化を遂げていた。

アップルは創業当初に「パーソナルコンピュータがない時代にそれを送り出して時代を変えた」のと同じく「スマートフォンがない時代にそれを送り出して時代を変えた」のである。

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「熱狂」が消えつつあるiPhone

しかし、スマートフォンという分野はすでに掘り尽くされており、スマートフォンに新しいイノベーションが生まれなくなりつつある。スマートフォン業界は成熟し、今後も小さなバージョンアップを繰り返しながら成長していくにしても、劇的な変化はそこから生まれない。

アップルのiPhoneも着実にバージョンアップして一世代前よりも早くなり、カメラの解像度も良くなっているのだが、人々を驚かす「何か」には欠けている。iPhoneは、スティーブ・ジョブズが常々言っていた「宇宙に衝撃を与えるもの」ではなくなってきた。

それは、人々がiPhoneに対して「熱狂」を持たなくなったことでも分かる。

2018年に発売された「iPhone XR」や「iPhone XS」は相変わらずアップルらしい美しさと高性能さを兼ね揃えていたバランスのよい製品だったが、この製品は売上がアップルの想定よりも下回った。

アップルの現在の経営者も、そしてアナリストも、その原因を「あまりにも高すぎるから」と結論づけていた。

実際、アップルは高価格戦略をどんどん推し進めていたので、iPhoneだけでなく、ほぼすべてのアップル製品は価格がどこまでも上昇していた。人々はそれを「アップル税」と呼んだが、アップルの製品は付加価値以上のプレミアが載せられているような状態だったのである。

しかし、人々はもうすでに「アップル税」を払いたいと思うほど熱狂していなかった。人々はこのように思うようになってきたのである。

「スマートフォンはどれを買っても同じ」
「iPhoneを買うにしても、新しいものは要らない」
「昔の機種でも十分に使える」

スティーブ・ジョブズ(ウィルター・アイザックソン著)。アップルの創始者スティーブ・ジョブズは2011年10月5日に肝臓癌で亡くなっている。56歳だった。

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来たるべき「5G」の時代を前にして

アップルは毎年毎年、iPhoneをバージョンアップし続けるだろう。それは絶対に続けなければならないことでもある。

今後は「5G」という凄まじいパラダイムシフトがやってくるので、スマートフォンは今よりもはるかに重要な製品になり得るからだ。(フルインベスト:100倍の通信速度と1000倍のトラフィックを扱う5Gが社会を激変させる

もちろん、アップルは今も十分に機能しているので、潤沢な資金で時代を切り拓いていく。しかし、5G時代にもアップルが「iPhone」で時代をリードしていけるのかどうかは分からない。

今後、アップルはサービスを重視して生き残る戦略を立てている。しかし、この「サービスの拡充」にしても、アップル製品が売れていないと「ユーザーが増えない」というジレンマがある。

アップルが今の企業価値を維持したいのであれば、やはり「革新的な製品を生み出す」という原点が重要になってくる。アップルのブランドを支持しているユーザーも、アップルのサービスよりも、アップルの「革新的な製品」を待っているはずだ。

簡単なことではないのだが、誰もが想像もしなかった「新しい世界」をアップルが作り出すことを世界は望んでいると言っても過言ではない。

スティーブ・ジョブズを失い、ジョナサン・アイブも消えていくのだが、そんなアップルでもスティーブ・ジョブズのDNAは継承されているのかいないのか。伝説の企業であり続けるのか。それとも凡庸な企業になっていくのか。

来たるべき「5G」の時代を前にして、人々は固唾を飲んで見守っている。(written by 鈴木傾城)

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ジョナサン・アイブ:偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー。スティーブ・ジョブズを失い、ジョナサン・アイブも消えていくアップル。スティーブ・ジョブズのDNAは継承されているのかいないのか。人々は固唾を飲んで見守っている。

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