アドビシステムズ。プロ市場を独占支配している脅威のソフトウェア企業

アドビシステムズ。プロ市場を独占支配している脅威のソフトウェア企業

普通の人はアップルやフェイスブックやグーグルやアマゾンがいかに驚異なのかを知っている。それは、これらの企業の製品やサービスを日常的に使っているからだ。また、マイクロソフトも知らない人はいないだろう。

しかし、クリエイターにはなくてはならないソフトウェア製品を作り、長年に渡って市場を独占しているのに、普通の人にはあまり意識されていない企業がある。当然、クリエイター的能力がゼロの政治家連中もほとんど知らない。

それは、「アドビシステムズ(Adobe Systems)」である。

プロのクリエイターでアドビ製品を知らない人はいない。知らないどころか、知っていて当然の企業である。さらに、アドビ製品を手足のように使いこなせるかどうかで、他のクリエイターと大きな差となって現れる。

写真を扱う現場、写真を加工する現場、カタログ制作、デザインや印刷現場で、アドビの「フォトショップ(PhotoShop)」を使えないと言えば、それだけで大きなハンディとなる。フォトショップは業界の標準(デファクトスタンダード)であり、言ってみれば唯一無二の存在でもある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

専門家御用達ソフトウェア

アドビシステムズは「フォトショップ」と「イラストレーター」という二大ソフトウェアで、クリエイティブの現場を完全に独占している企業である。フォトショップは写真加工の現場で、イラストレーターはデザインの現場で使われる「専門家御用達ソフトウェア」だ。

専門家がやりたいことをとことん可能にする潜在能力を秘めているので、これらのソフトウェアは素人が簡単に使えるものではない。

日常的にフォトショップやイラストレーターを使いこなしているプロでさえも、これらのソフトウェアの潜在能力があまりにも深すぎて、すべてを理解していない。つまり、アドビのソフトウェアは決して取っ付きやすい製品でもないし、気軽に使える製品でもない。価格もそれなりに高い。

そのため「アドビの製品群よりも使いやすいソフトウェア」「安いソフトウェア」が山のように現れては、アドビの牙城を崩そうと、勝負してきた。

しかし、こうしたライバル企業はことごとく討ち死にしている。一定の認知度は得られても、アドビに代わってプロの現場で使われるようにならないのである。

今でも、フォトショップやイラストレーターの「類似品」は多く出ている。そして、オープンソースのソフトウェアでも、「フォトショップ」を模した製品が出ていたりする。

たとえば、GIMP(ギンプ)などは常にアドビのライバルとして語られている。GIMPは、無料でそれなりのことができる。高機能である。

しかし、それでもフォトショップにできてGIMPにできないことがあったり、デザイン現場ではフォトショップだけではなく他のアドビ製品との協調もあったりするので、フォトショップを使っているプロがGIMPにダウングレードすることは基本的にない。

もはや無料の製品があったとしても、フォトショップの牙城は崩れない。そうしたソフトウェアを提供して、業界を独占支配しているのが「アドビソフトウェア」なのである。

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業界で圧倒的なシェアを築き上げていく

アドビは印刷業界も独占支配している。印刷業界ではもはや版下はすべてDTP(デスクトップ・パブリッシング)としてデジタルに置き換わっている。書籍や雑誌やチラシ等のレイアウト(組版)は、すべてコンピュータによって行われている。

そこで使われるソフトウェアは何か。業界を独占しているDTPソフトは、「Adobe InDesign(アドビ・インデザイン)」である。

かつては「クオークエクスプレス」という強大なライバルもいたのだが、アドビはすでに「インデザイン」で圧倒的なシェアを築き上げている。

アドビは顧客が望む機能を貪欲に吸収していき、それぞれの国のそれぞれの印刷に関する慣習をも取り込み、フォントも拡充し、フォトショップやイラストレーターとの連携を押し進め、もはやアドビ以外のソフトウェアが使えない「高み」にまで世界を作り上げた。

そもそも、印刷業界で必須のフォーマットである「PDF」もアドビが開発したフォーマットである。業界は、もうアドビ支配から逃れられないのである。

昨今は、書籍や雑誌を制作する印刷業界全体がウェブページに飲み込まれて凋落しており、紙のレイアウトよりも、ウェブページのレイアウトのレイアウトの方が重要になってきている。

しかし、ここでもアドビは抜かりがない。ウェブのレイアウトを制作するために、アドビは「Dreamweaver」や「XD」などを提供しており、ここでも大きな影響力を行使している。

そして、今後は「5G」の時代に入って映像編集技術がすべての企業で最重要課題になっていくのだが、ここでもアドビは重要な製品で業界に食い込んでいる。それが「Adobe premiere(アドビ・プレミア)」である。

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「5G」の時代でもアドビは跳躍する

今、映像業界のプロの現場でよく使われているソフトウェアはいくつかある。

「Adobe premiere(アドビ・プレミア)」以外に「DaVinci Resolve(ダヴィンチ・リゾルブ)」や「Apple Final Cut Pro(アップル・ファイナルカット・プロ」などが使われていて、ハリウッド映画などで圧倒的なシェアを持っているのが「ダヴィンチ・リゾルブ」である。

アップルはハードウェア事業に注力しており「ファイナルカット・プロ」で業界のシェアを独占しようという野心は見せていないのだが、アドビは違う。

かつて、印刷業界で独占を欲しいままにしていた「クオークエクスプレス」を追い抜いたように、映像業界を「アドビ・プレミア」や「Adobe After Effects(アドビ・アフターエフェクト)」で追い上げて独占しようとしている。

アドビは映像分野でも大きな成功を得るだろうか。私は、アドビはいずれ「アドビ・プレミア」「アドビ・アフターエフェクト」や、その他のソフトウェア製品群で粘り強く責め続けて業界を支配するところにまで到達するのではないかと思っている。

このように考えると、アドビが掌握している「プロ市場」は今後10年、20年に渡ってアドビ製品がずっと使われ続けるのは必至であり、その間ずっとアドビは安定的な収益を手にするというのが読める。

アドビシステムズは投資対象としても有望であるとも言えるし、長期投資の対象にもなり得るものである。

私自身はもうすでに「個別銘柄を買う」という局面を卒業して今は市場全体・セクター全体を丸ごと買うETF(上場投資信託)しか買わなくなっているのだが、個別銘柄での長期投資を狙っている人はアドビシステムズ(NASDAQ:ADBE)は検討しても良い投資対象であると思っている。

「5G」の時代は、映像の時代だ。新しい時代の幕開けにもなる。その時代でもアドビは十分の存在価値を発揮できるし跳躍する余地がある。GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)とはまったく違った世界で、強大なソフトウェア企業が存在する。

これが、アメリカのすごいところでもある。(written by 鈴木傾城)

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アドビCEOシャンタヌ・ナラヤン。プロのクリエイターでアドビ製品を知らない人はいない。知らないどころか、知っていて当然の企業である。さらに、アドビ製品を手足のように使いこなせるかどうかで、他のクリエイターと大きな差となって現れる。

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