新時代の悪夢と、アップルが打ち出した「Sign In with Apple」の重要度

新時代の悪夢と、アップルが打ち出した「Sign In with Apple」の重要度

私たちの社会はスマートフォンによって文明の再構築が為されている。電話も、音楽も、テレビも、買い物も、決済も、情報収集も、コミュニケーションも、いまやすべてがハイテク産業が掌握した。

このスマートフォンは、アップルとグーグルがOS(オペレーティングシステム)を開発し、独占している。そのため、全世界の人々の個人情報はこの2社に集約されていると言っても過言ではない。

さらに、現代ではSNSも重要な基盤になっているので、フェイスブックにも個人情報が莫大に蓄積されている。

それだけではない。これらの個人情報はクラウドによってサーバー群にデータ保存されているのだが、このクラウドのビジネスで他を寄せ付けないスケールとシェアを持っているのがアマゾンである。

つまり、私たちの情報はアマゾンという企業によって管理されている。さらに、このアマゾンはショッピングサイトでも個人情報を蓄積している。

そのように考えると、「GAFA」と一括りで呼ばれている「グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン」は全世界の個人情報を飲み込む巨大ブラックホールであることが理解できるはずだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

「Sign In with Apple」

このアメリカから徹底的に知的財産を窃盗しているのが中国だが、この中国も「GAFA」と似たような企業を中国国内で作り出して、共産党政権が国民の情報を大量に蓄積し、監視するシステムを作り上げた。

そして中国政府は、中国人をスコアで信用を管理するようになり、信用が低い人間は行政サービスを制限するようなシステムを勝手に運用しているのである。中国共産党政権のやっていることは、あまりにも邪悪だ。

では、「GAFA」は邪悪にならないのか?

フェイスブックは、ユーザーの個人情報を勝手に広範囲に渡って意図的に漏洩してカネを稼いでいるので有名だ。グーグルは漏洩こそしていないが、Gメール等のメール内容を読み取って広告を出すようなシステムを構築している。

これは「GAFA」も邪悪になる素地はあるということを意味している。

ただ、こうした個人情報を巡る不安や懸念が大きく膨れ上がろうとしている中で、独特の動きをしているのがアップルである。

アップルはiPhoneやiPad等で指紋認証や顔認証を使っているのだが、これらの情報は暗号化されてデバイス内部に保管されている。そして保存されているのは指紋や顔の画像ではなく数値である。

アップルは重要な個人情報が漏洩しないように厳重に管理する企業であり、「個人情報を使ってカネを儲けることは一切しない」とも明言している。個人情報は「守るべきもの」であって「売りさばくもの」ではないというスタンスを明確にしている唯一の企業がアップルである。

売上を上げるために、いくらでも邪悪になる余地がある「GAFA」だが、アップルの場合はポリシーと哲学が徹底している。

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今までよりも効率的に防衛する

2019年6月3日、アップルはWWDC(世界開発者会議)を開催したのだが、OSの新しい機能やマックの新製品と並んで注目されたのはセキュリティに関するひとつの発表だった。それが以下のものだ。

「Sign In with Apple」

「Sign In with Apple」は、シングルサインオン機能の一種である。

認証をシステムとは独立したシステムで行い、ユーザーは他企業の多様なアプリでも今まで使っていた認証システムをそのまま使ってアプリにアクセスすることができるようになる。

ユーザーはシステムごとに個人情報を登録する手間や新しいパスワードを覚える手間がなくなるので便利なのだが、このシングルサインオン機能で最も普及しているのがフェイスブックとグーグルのものである。

ここが問題だったのだ。ユーザーはこれによってますます個人情報をフェイスブックやグーグルに渡すことになり、これらの企業は徹底的にユーザーの情報を飲み込んでいたのである。そして、私たちの個人情報は広告のために利用され、読まれ、売られてきた。

アップルの「Sign In with Apple」は、こうした状況を一変させる。

「Sign In with Apple」は厳重に管理されたアップルの認証をIDに使うものであり、これによって他のアプリケーション開発企業に個人情報が漏洩していくのを避けることができるようになる。

メールアドレスの登録が必要な場合は、ランダムなメールアドレスが生成され、使用していたシステムをやめるとメールアドレスも抹消される。

個人情報の漏洩はアップルの「Sign In with Apple」を利用することによって、今までよりも効率的に防衛することができるようになるのだ。

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邪悪なビッグブラザーの監視

アップルは他企業が作ったアプリが勝手に位置情報を収集することを規制し、ユーザーの撮った動画がアプリ制作会社の管理するクラウドに保存されるような機能も遮断する。

「プライバシーはユーザーの基本的人権」というポリシーを、技術で表現するアップルの一連の動きは、「5G」によって新たな次元を迎える今後の時代にとって非常に重要なものである。

「5G」が本格化していくと、時代は大きく変わる。(フルインベスト:100倍の通信速度と1000倍のトラフィックを扱う5Gが社会を激変させる

あらゆるモノがインターネットにつながり、GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)の保有する個人情報はますます莫大なものになっていくからである。

GAFAはそれこそ、私たちが何時何分にどこにいて何を食べて誰と過ごして何時に寝たか、という情報までもすべて掌握することが技術的に可能になる。

さらに、アプリケーションやハードによっては、あらゆる企業が私たちの個人情報を高精度・高密度で捕捉することができるようになる機能を有することになる。

そんな中で、「プライバシーを守る」というポリシーや哲学を持っている企業が存在するというのは、どれほど重要なことなのか誰でも想像できるはずだ。

影響力のある企業がきちんとプライバシー重視のポリシーを打ち出していないと、プライバシーの侵害に歯止めが効かなくなる。

そういった意味で、アップルの一連の動きは私たちの未来にいかに重要なものなのか、その「重さ」が分かるはずだ。邪悪なビッグブラザー(巨大監視者)が世界を席巻して人々を監視するようになると、100倍の通信速度と1000倍のトラフィックを扱う5Gは、そのまま人々の悪夢となる。

フェイスブックはVRヘッドセットの分野にも進出しようとしているのだが、フェイスブックはそのコントローラーにあるメッセージを隠していたのが発覚したことがあった。そこには、こう書かれていた。

Big Brother is Watching.
(ビッグブラザーが見ている)

WWDCで発表するアップルのCEOティム・クック。「プライバシーを守る」というポリシーや哲学を持っている企業が存在するというのは、どれほど重要なことなのか誰でも想像できるはずだ。アップルは明確にプライバシー重視のポリシーを打ち出している。

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