為替を巡るアメリカと中国と日本の動き。今後「円」はどうなるのか?

為替を巡るアメリカと中国と日本の動き。今後「円」はどうなるのか?

グローバル化の中で、それぞれの国の通貨の価値は相対的に決まる。通貨が高ければ外国からモノを安く買える反面、自国の商品は外国からは高く見えるので売れ行きが落ちる。

逆に通貨が安ければ、外国の製品が高くなる反面、自国の商品は外国から安く見えるので売れ行きが上がる。

日本はエネルギー資源がないので、外国から資源を買うしかない。そのため、円が高くなってくれればエネルギーを安く買えるので国民生活は楽になるように見える。

しかしながら、日本は外国にモノを売って生きている国なので、円がある程度安くなってくれないと企業が競争力をなくしてしまう。企業が競争力を失うと、それが従業員に跳ね返り、結果的に日本人を苦しめる動きになる。

つまり、円は高すぎても安すぎても日本に大きなダメージを与えるわけであり、一方的な円高も円安も「まずいこと」なのである。

2009年から2012年まで続いた「悪夢の民主党政権時代」は、民主党が日本企業の競争力を削ぐためにひたすら「円高誘導」「円高維持」の政策を続けて、日本企業も日本経済も大ダメージを被った。

この当時、ドル円レートは1ドル70円〜80円台だったが、これによって日本は未曾有の危機に直面したのだった。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

民主党政権の円高で破壊された日本

日本が経済的にやっと息を吹き返したのは、安倍政権がアベノミクスをひっさげて2013年から意図的にドル円レートを適切な円安に戻したからである。これによって、やっと日本企業は国外で価格競争力を回復させた。

しかし、民主党政権で受けたダメージはあまりにも大きかったのと、少子高齢化によるイノベーションの欠如や、人口減による内需の縮小や、産業構造のシフトへの対策の遅れなどが重なって、日本企業が再び大躍進したという話にはなっていない。

この民主党政権時代に円高でボロボロになっていく日本企業を踏みにじって成長したのが中国や韓国の企業である。この結果を見ると、なぜ民主党政権は円高に誘導して放置し続けたのかというのが分かる。

日本の競争力を大きく削いで日本を破壊し、中国や韓国を躍進させるために「極度の円高」を維持するのは極度の円高誘導が最適だったのである。

この民主党政権時代の円高は「何となく円高になった」のではない。意図的に日本破壊としての円高がよりによって日本政府によって仕掛けられたということだ。

そんなわけで民主党から政権を奪い返した自民党・安倍政権が極度の円高を是正したのは、日本を取り戻す上でトップ・プライオリティの仕事だった。

円安と株高は、まさに「日本を取り戻す」ためにやらなければならないことであったのだ。それを見事にやったから安倍政権は安定政権に入ったのである。

現在、円は110円から120円のレンジにある。このレンジであれば、輸入にも輸出にもバランスが取れているので、後は日本企業のイノベーションやビジネス展開が勝負になる。

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通貨の価格は国家の命運を決める

中国と韓国は、日本が円高で苦しんでいる中で躍進したので、自国通貨を安く誘導することが自国企業の躍進になることをよく知っている。そのため、両国共に、意図的かつ露骨に自国通貨を安くして自国企業の競争力を増している。

それがあまりにも露骨なので、中国も韓国も世界から「アンフェアな為替操作国」として糾弾されているのが今の現状だ。

特に中国は、ドナルド・トランプ大統領に貿易戦争を仕掛けられて自国産業が危機に陥っていることもあり、人民元安誘導が止まらない。

そのため、いよいよアメリカは『対米輸出に有利な人民元安誘導の抑止策をめぐり、違反した場合に中国に適用する罰則の導入を検討』とウォールストリート・ジャーナルが報じるような動きになっている。

中国製品は「安い」のだが、その安さには政府・軍・企業が一体化した知的財産の窃盗だけでなく、中国政府による産業育成のための補助金に、人民元安誘導というなりふり構わない姿勢によって成り立っているのだ。

そのため、アメリカが罰則の導入を検討したと言っても中国政府が素直に従うはずもなく、為替操作のためにあらゆる策略を仕掛けていくはずだ。

今後、中国が通貨政策をどのようにするのかは未知数だが、中国がこれほどまで通貨政策にこだわっているということ自体が、「自国通貨安が自国産業の躍進に重要な政策である」という一面を露わにしている。

通貨の価格は国家の命運を決める重要な要素のひとつであり、中国はこれを不正に悪用している。悪用すると利益が得られるから悪用する。

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長期的に見るとどちらに向かうのか

通貨は国家によって操作される。基本的に市場に委ねられており、その規模からしても一国で完全なる操作は不可能だ。

とは言っても、政治家が意図的に為替誘導の方向性をどちらにするかを「不用意にコメント」すれば相場は簡単に動くくらいなのだから、政府はやれることは何でもするだろう。

行き過ぎた通貨高・通貨安は政府によって是正されるのは珍しくない。完全に市場原理に委ねられる市場はない。大抵は干渉が入る。

しかし、通貨の価値は最終的には「国力」によって定められるというのは考えておかなければならない事実だ。

日本円は現在110円から120円のレンジで動いているとしても、仮に日本の国力が他国と比べて相対的に上がったら円高になっていくし、逆に日本の国力が他国よりも相対的に下がっていけば円安になる。

長期的に見ると、どちらに向かうのか。

1980年代は多くの日本企業が時価総額ランキング上位に日本企業が食い込んでいたのだが、今では上位30位を見ても日本企業はどこにもない。かつてに比べて日本企業の存在感は完全に喪失している。

日本は少子高齢化で苦しんでいる国で、すでに人口減も起きている。企業は活力を喪失してイノベーションも生み出せなくなってきている。その上に、社会保障費の増大も深刻化しており、政府の財政赤字も看過できない額になっている。

今のまま、まったく手が打ていないのであれば、日本の国際的影響力は喪失していく一方である。つまり、国力は衰えていく一方である。そうであれば、円はいずれは国力を反映して安くなっていくのは避けられない。

バブルの前まで、日本の対米ドル為替レートは200円台だったのだ。今、私たちは200円という数字は想像できないが1980年代の円はそうだった。

日本が奇跡の復興を遂げればまた話は変わるが、今後どうなるのか為替レートからも日本を見つめていきたい。(written by 鈴木傾城)

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バブルの前まで、日本の対米ドル為替レートは200円台だったのだ。今、私たちは200円という数字は想像できないが1980年代の円はそうだった。日本が奇跡の復興を遂げればまた話は変わるが、今後どうなるのか為替レートからも日本を見つめていきたい。

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