なぜ「安いところで買って、高いところで売る」という基本は難しいのか?

なぜ「安いところで買って、高いところで売る」という基本は難しいのか?

株は元本を保証しない。つまり、元本が割れることがある。相場が暴落すると逃げる間もなく元本が割れる。企業に責任がなくても景気が悪くなると元本が割れる。運が悪ければ、どんなに素晴らしい企業を買っても元本が割れる。

株を絶対に買わないというのは、この元本割れに耐えられないからであり、貯金が利息0.02%でも耐えられるのは元本が割れない安心感があるからである。

株はいつでも元本が割れる可能性があることは誰でも知っている。だから、株式を買うとき、誰もが元本割れしたくないがためにタイミングを図ろうと考える。

相場を見て、何とか安い時に買おうと考える。しかし、このタイミングを図るというのが簡単なことのように見えて意外と難しい。

株の値動きはまったく自分の思惑を外れて上がり、下がる。増収増益であっても株価が下がることもあれば、減収減益でも株価が上がることもある。

あまりに不条理な動きをするので、株で大損して破滅していく人も多い。個人投資家だけでなく、プロの投資家ですらも大損をする。2018年の秋から冬にかけての相場下落は「大暴落」というわけではなかったのに、やはり破綻に追い込まれたファンドもあった。

そういったニュースがあると、ますます株に遠ざかる人が増える。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

安いところで買って、高いところで売る

株価の動きの節操のなさは、呆れるほどである。FRB議長が不用意なひとことを発しても株は落ちる。あるいはドナルド・トランプが大風呂敷を広げたら株が上がる。そんな現象は日常だ。

景気が悪くなりそうだと噂が出れば、まだ景気が悪くなっていないにも関わらず、株価の方が先に下落する。実際にそうなる前に、株価が先行して暴落するのである。投資家が損する前に逃げようとするからだ。

投資家はみんな株がまだ暴落していないうちに売り逃げたいと考える。暴落したら、今度は安いところを拾って値上げしたところを売りたいと考える。いわゆる「株は安いところで買って、高いところで売る」という動きをしたい。

しかし、株で8割の人が失敗すると言われている通り、「安いところで買って、高いところで売る」はそれほど簡単ではない。なぜなら、安いところで買うことも、高いところで売ることも、人間の心理に反しているからである。

なぜ安いところで買えないのか。

たとえば、リーマン・ショックの数ヶ月、世界中のほとんどの株式は優良企業でも半値以下に下がった。しかし、ほとんどの人は、そのときに優良企業の株を買うことができなかった。

その理由は簡単だ。「もっと下がるかもしれない」「底が見えない暴落だ」「誰もが買うなと言っている」「この暴落は景気悪化を招き、さらに株価は暴落する」と、ありとあらゆる悪条件が噴出していたからである。

安いところでは、誰もが株を買うなと戒め、あらゆる分析がマイナスを指し示している。新聞もテレビも、評論家も、みんな状況が悪いことを朝から晩まで叫んでいる。そんな中で、株を買える人は少ない。

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「安く買って高く売る」は苦痛を伴う

さらに高値で売るというのも難しい。なぜなら、「もっと上がるかもしれない」「今売ったらもったいない」という気持ちになるからだ。もっと儲かるかもしれないと思う最中に売り飛ばせる人はいない。じっと保有する。

そうしているうちに、何らかのきっかけが来て相場は一瞬にして反落する。災害は常に忘れた頃にやってくる。予期していない日に、いきなりそれはやってくる。あまりにも突然すぎて逃げることさえできない。

もっと安くなるかもしれないので安く買えない。もっと高くなるかもしれないので高く買えない。「株は安く買って高く売る」は、普通の人には心理的苦痛を伴うものなのである。

来る日も来る日も株価が下がったら、損をしたくないと思って売る。そうすると、「安いときに株を売る」となる。リーマン・ショックでは、そうやって投げた人たちが大量にいたから、史上空前の株価下落となった。

逆に、来る日も来る日も株価が上がったら、乗りそこねたくないと思って買う。そうすると「高いときに株を買う」となってしまう。日本の1980年代のバブルは、そうやって高い株を大量に買った人がいたから、史上空前の高値となった。

高い株はもっと高くなると思って買いやすい。安い株はもっと下がると思って売りやすい。だから、多くの人が高くなったら買って、安くなったら売るという行為に近づいていく。

人間の感情に即して行動すれば、どうしてもそうなってしまう。

相場で失敗する人が多いのは、まさに感情の赴くままに株の売買をしてしまうからでもある。いや、冷静な人でも感情をぐらぐらと揺さぶられるのが株式投資なのだとも言える。

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タイミングの投資から脱する方法

株価が暴落したらハイエナのように株価を食いつくすというのは理想だ。忍耐強い投資家は、虎視眈々とそれを狙う。ウォーレン・バフェットのような稀代の投資家はすべてこの手法で成り上がってきたと言っても過言ではない。

しかし、そういった場面はいつ来るのか分からない。さらに、そういった場面になっても実際に安い株をガツガツと食う度胸が自分にあるとは限らない。良いタイミングで大量に買うというのがなかなか難しい。

人間心理を考えると仕方がない。

暴落を待って、実際に暴落が来ても、暴落の場面では「どこが底か分からない」ので、買っても買っても下がっていくということはよくあることだ。底値だと思って飛びついたら、そこからさらに50%下がるというのは珍しくも何ともない。

暴落の中をうまく立ち回る技量がないと思うのであれば、毎年きちんとそれなりの利益を出している「優良な多国籍企業」や、「優良企業をひとまとめにしたETF」をあまりタイミングを考えずに買って、あとは放置しておくというのが普通の人間には一番理にかなっている。

つまり、優良企業やETFに「定期定額積立投資」をする。

毎年きちんと利益を出している企業は、いずれ暴落から立ち直ってまた株価が戻っていく。またアメリカの株式市場は嵐が収まったらいずれは上を向く。

いつ、株価が戻るのかは判断できないので、配当を再投資しながらそれを待つことになる。これは相場を見て売り買いのタイミングを計る投資とはまた別の投資方法であるのが分かるはずだ。

「相場が大暴落した時、優良企業の個別株を大量に買い込む」のは、成功したら最も大きな資産を作り出してくれる投資手法だ。個別株の波乱を避けるためには優良企業をまとめたETFを買うのも悪い手ではない。

しかし、相場をタイミングを計るのは難しいと考えるのであれば、定期定額積立投資で個別株やETFを決まった時期に淡々と買うというのが無難だ。

この手法は「安い時に優良企業を大量に買う」という方法に比べると成功の度合いは格段に落ちるのだが、逆に言えば極度の暴落や長期低迷でもくじけない投資ができるので一般向きではある。(written by 鈴木傾城)

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高い株はもっと高くなると思って買いやすい。安い株はもっと下がると思って売りやすい。だから、多くの人が高くなったら買って、安くなったら売るという行為に近づいていく。人間の感情に即して行動すれば、どうしてもそうなってしまう。

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