アマゾンもいずれは巨大化した弊害の中で身動きできずに凋落するのか?

アマゾンもいずれは巨大化した弊害の中で身動きできずに凋落するのか?

2018年の秋から徐々にアメリカの株式市場は変調をきたしてクリスマス・イブは大暴落した。ところが12月26日に、アマゾンが「2018年は記録的な年末商戦になった」と発表したことで株式市場は凄まじいまでの大反発を見た。

その反発は「全構成銘柄が前営業日比で上昇するという15年以来の現象」「S&P500種の構成銘柄のうち99.8%が上昇」という凄まじいものだった。まさに「記録的な反発」と言っても過言ではない。

この暴落と暴騰こそ「乱高下」とも言うべきものだが、この乱高下の結末はどこに向かうのかは誰にも分からない。

「このまま上がっていく」と考えるアナリストもいれば「一時的な上昇で基本的には下落基調である」と考えるアナリストもいる。私自身は予測は関心がないが、2019年はそれほど楽観していない。(フルインベスト:いよいよ荒れ出した株式市場。溶けていく資産を前に発狂寸前になる人もいる

ただ、アマゾンが下落する株式市場を一瞬でも救ったのは興味深い。

アマゾンは全世界の小売業界を飲み込んでいく巨大化したモンスターIT企業なのだが、この巨大化を前に多くの競合は敗退し、蹴散らされている。しかし、面白いことにジェフ・ベゾス自身はアマゾンは「いずれ潰れる」と考えていることを明かしている。

「アマゾンは大きすぎて潰せない存在ではない。実際、私はいつかアマゾンは潰れると考えている」

創始者が自らの口でそう述べている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

ある時点で、身動きできなくなる

ジェフ・ベゾスがそのように考えるのは、巨大な存在は、その巨大さが仇になって環境が変わったときにうまく変化に対応できず、そのまま死に絶えていくのが歴史の常となっているからだ。

企業、グループ、国家、文明は、それがいったん軌道に乗ると、どんどん発展して大きくなっていく。成功すればするほど、組織は巨大化し、複雑化していく。

科学、医学、文化、システムも同じだ。それがいったん軌道になると、どんどん機能が付与されていき、巨大化していく。そして、ありとあらゆる機能を飲み込んで複雑化していく。

こういったものが膨れあがっていく時というのは、成功しているときである。成功しているときは、成功を極大化させるために、膨張することが善になる。

組織はより巨大になれるように、アメーバのように触手を伸ばしていろいろなものを取り込んでいく。システムもより利便性が高まるように、周辺機能を次々と取り込んでより包括的なものになっていく。

それが成功に次ぐ成功を生み出しているとき、組織やシステムの巨大化は止めることができず、巨大化する動きが暴走していく。その結果、どうなるのか。

ある時点で、身動きできなくなる。

巨大化すると言っても、巨大化には限度があるからだ。これはすべてに当てはある。マイクロソフトも、巨大化と複雑化に足を取られて検索の時代やスマートフォンの時代に乗り遅れた。

そして複雑化すると言っても、複雑化にも限度がある。その限度まで成長すると、それ以降は巨大さと複雑さ故に身動きが取れなくなって鈍重になるのである。

マイクロソフトは当初はIBMを「恐竜化した存在だ」と嘲笑っていたのだが、やがて時代が巡ると自らが「恐竜化した存在」と言われるようになっていた。

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巨大化した存在は必ず「現状維持」がモットーに

世の中は変わる。時代は変わる。ある日、突如として何らかのパラダイムシフトが起きて、新しい流れに変わる。そんなとき、不必要かつ分相応に巨大化・複雑化した組織やシステムは、方向転換することができずに取り残される。

方向転換しようにも、あまりにも図体が大きくなりすぎて曲がれない。うまく時代に合わせることができない。自らの巨大さが致命傷になってしまうのだ。

分相応に大きく成長した組織・システムは、何でもそうだが、次の5つの点で自壊していく。

(1)複雑化して手に負えなくなる
(2)巨大化して手に負えなくなる
(3)老朽化して手に負えなくなる
(4)しがらみで手に負えなくなる
(5)コスト上昇で手に負えなくなる

複雑化はワナになる。複雑化したものは、その複雑さゆえにいずれは誰も全体を把握することができなくなる。一箇所に手を加えたら予期せぬ部分で問題が発生したりする。細部が見えないので、何がどうつながっているのか分からず、悪影響が予測できなくなるのだ。

ハイテク産業は特にそのような傾向が強い。ある分野で成功して巨大化し、そのビジネスモデルに最適化したら、それがワナになる。最適化したことによって、新しい時代に対応できなくなるのである。

新しい時代に対応するには、利益を生み出している現在のビジネスモデルを捨てなければならないからだ。うまくいっているビジネスモデルを捨てるのは狂気の沙汰だと誰もが考える。

だから、巨大化した存在は必ず「現状維持」がモットーになる。

その結果、ますます存在が古臭くなっていく。それが分かっていても、それ自体が安定しているので変えられない。そのまま突き進むしかないのである。

しかし、どのような形で現状維持をしたとしても、それが意味をなさないほど老朽化する日が来る。それを維持すること自体が負担になり、コストに耐えられなくなる。

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アマゾンもそうした歴史を辿るのは避けられない?

人々は、いつの時代でも「巨大化した組織」「巨大化した存在」に畏怖を抱き、小さなものよりも大きなものを尊ぶ気質がある。

たとえ、その巨大な存在が、すでに「現状維持」に入っていて、時代遅れになっているのが明白であっても、巨大さは永遠に維持できると思ってしまう。

10年前まで日本の家電メーカーは学生たちの人気の就職場所で、エリート学生はみんな家電メーカーに入ったが、巨大さに幻惑されて、それが時代遅れの落ち目の組織であることに気付かなかった。

学生はいつも「時代の寵児」になっている企業を選ぶのだが、その時代の寵児はその時が絶頂期で、あとは衰退するだけの存在なのかもしれない。

バブル真っ最中の頃、学生に人気の就職先は金融機関や建設会社、不動産会社だった。誰もがそこに就職したいと願い、銀行員や不動産屋になりたがった。

しかし、バブルが弾けて最も痛手を被ったのは言うまでもなく、金融機関、建設会社、不動産会社であり、当時の学生はババを引いただけで終わった。

2000年以降は、証券会社や投資会社が時代の寵児になって、誰もがそういった会社に入りたがった。しかし、2008年のリーマン・ショックがやってきて、これらの企業は一気に経営悪化に追いやられて、リストラの嵐が吹き荒れた。

巨大化に幻惑されると、人生を誤る。巨大化した存在は、安心や安泰を保証するものではないし、ましていつまでも巨大な存在でいられるわけでもないのだ。

巨大な組織だから安心だと思ってそこに寄りかかろうとした人間たちにとっては予想外だったかもしれない。しかし、巨大な組織、巨大なシステムを抱えた組織は、巨大化・複雑化に足を取られ、それが維持できなくなった瞬間に「終わり」だ。

アマゾンの創始者であるジェフ・ベゾスが「私はいつかアマゾンは潰れると考えている」というのは、アマゾンもまたそうした歴史を辿るのを避けられないと悟っているからだとも言える。

現在の相場を牽引しているのは「GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル」だが、果たして10年後はどのような勢力図になっているのか興味深い。(written by 鈴木傾城)

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アマゾンの創始者であるジェフ・ベゾスが「私はいつかアマゾンは潰れると考えている」というのは、アマゾンもまたそうした歴史を辿るのを避けられないと悟っているからだとも言える。

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