日本人がアップルの研ぎ澄まされた製品を見て悔しがるのは理由がある?

日本人がアップルの研ぎ澄まされた製品を見て悔しがるのは理由がある?

私はアップルの株主ではないが、アップル製品のユーザーだ。デスクトップマシンもノートブックもアップルのマックで統一しているし、タブレットもスマートフォンもアップル製品を使っている。

ジョン・スカリーの時代から、私はずっとアップル一辺倒だった。アップルの持つシンプルさのこだわりや哲学を素晴らしいと感じていたし、その使い勝手の良さにも安心感を持っていたからだ。

下らない批評家は「もうアップルは駄目だ」「アップルは凋落した」と言うのが好きだが、それは今に始まったことではない。アップルは、数字しか分からない馬鹿なアナリストや企業経営者には、そのブランドの価値を評価できない企業だからだ。

そう言った意味で、世界最強と言われる投資家ウォーレン・バフェットがアップルの株式を大量購入した時、その慧眼に驚いた。

バフェットは当初はIBMのようなどうでもいい会社を買っていたが、アップルで本物に乗り換えた。それだけでも、バフェットは凡庸な投資家とは違う能力を身につけていると言える。

バフェットはアップルのブランドと哲学の途方もない価値を見い出している。それは、恐らく正しい評価だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

儲かる儲からない以前に、重要視しているもの

アップルは、オリジナリティを重視する企業である。

古くは「マッキントッシュ」によるパーソナル・コンピューター機器から始まり、最近ではタブレットからスマートフォンまで、すべてアップルが「世の中を変えてきた」と言ってもいい。

しかも感嘆すべき点は、誰かの真似をして作り出したのではなく、独自の美学と哲学で新しい革新を生み出してきたという部分である。

こうしたアップルの革新のDNAは、言うまでもなく創業者であったスティーブ・ジョブズの製品に対する強烈な「こだわり」が、ジョブズなき今も継承されているからである。

アップルの製品を最も愛している民族はアメリカ人ではなく、日本人だと言われている。現にアイフォンのシェアは日本が一番高い。そのためアップル自身も、フェリカ対応で日本独自仕様を出してきたりしている。

なぜ、アップルの美しい製品群が日本人に最も受け入れられているのかというと、実は日本人もまた、自分の関わる製品に対して強烈な「こだわり」を持っているからだ。

日本は、商人の国でもなく、金融の国でもない。日本は、「職人の国」である。儲かる、儲からない以前に、質に対する強烈な「こだわり」が優先する。

職人というのは、自分の作り出す商品に極限までこだわり、細部を磨き上げ、誰も見ない裏側にさえも美学を求める「狂気のこだわり」を持っている人だ。

「より良くしたい」「もっと良くしたい」という突き上げるような感情が止められない。もっと素晴らしいものにするという部分に「こだわり」を持つ。

本物の日本人は、ひとりひとりがスティーブ・ジョブズと同じ「こだわり」を有している。ここにアップルの製品が日本人を惹きつけて止まない理由がある。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

日本の企業が失った「もの」とは何か?

製品の質をとことん磨き上げる日本人の「こだわり」は、諸外国から見ると狂気のように見られている。思い起こせば、スティーブ・ジョブズもまた「狂気のようだ」と形容されていた。

スティーブ・ジョブズの哲学や美学は、まさに日本人の「職人魂」と同一のものだったのだ。

スティーブ・ジョブズ自身も日本に惹きつけられ、日本の職人魂を愛していた。音楽革命を引き起こした「アイポッド」も、ソニーのウォークマンのリスペクトから生み出されている。

アップルの徹底したこだわりの遺伝子は日本がお手本だったのだ。

日本人は「なぜ日本にアップル製品のようなものが生み出せなかったのか」と悔しがる。それを言う時、日本人の頭の中にはアップルの世界最強の時価総額や経営手法は含まれていない。

純粋に、美しく、精巧で、惚れ惚れするようなアップルの「製品群」だけを見てそう評価している。

日本人はアップルの巨大な売上や資金力に注目しているのではなく、ひたすらその製品の素晴らしさに注目しているのだ。ここに日本人の特性が隠れている。しかし、当の日本人だけが気付いていない。

日本人がアップルの売上に羨望の目を向けているという話は聞いたことがない。日本人がアップルに心酔しているのは、会社の規模ではなく、こだわり抜かれた製品の美しさなのである。

まさに、日本人が「職人の国」である証拠だ。

アップルは、製品を良くしたいという強烈な「こだわり」において世界ナンバーワンであり、日本人はそこに素直に痺れているのである。

翻って現在の日本の家電会社を見つめたとき、こういった強烈な「こだわり」を感じさせる企業は少なくなった。大企業になればなるほど、かつての日本人が持っていた製品に対する強烈な「こだわり」が消えている。

そんなことになってしまったのは多くの複合的な理由があるが、大きいのは経営学を学んで数字だけしか関心のない事なかれ主義のサラリーマン社長が居座っているからだ。

こういった経営者は数字だけしか関心がない。製品にコストがかかっていると思えば、質を落としてもコスト削減の方を優先する。職人は質を追及するが、雇われ経営者は質など普通でよくて、それよりもコストを追及する。

それが積み重なっていくと、最終的に製品から強烈な「こだわり」が消えていき、凡庸な製品だけが残り、個性も、魅力も、何もかもが急速に消えていく。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

日本人はアップルの「凄み」を本能的に感じている

もちろん、猛烈なまでに「こだわり」を見せても、それが直接売上に結びつくと決まっているわけではない。

むしろ、妥協を知らない狂気なまでのこだわりは、先行投資が膨らんで赤字になっていったり、期限の遅れの元凶になり、妥協を求める社内の人間たちの強烈な反撥を受けたりして、次第に追い込まれていくこともある。

スティーブ・ジョブズも社内で激しい激論の中で製品を生み出してきている。

妥協を求める声は絶対にある。それでも、そこを突き抜けて「こだわり」を優先していくところに、ジョブズの凄みがあり、さらにはその遺伝子を継承したアップルという特異な企業の凄みがある。

日本人はアップルの「凄み」を本能的に感じている。アップルが「本物」であることを知っている。本来であれば、アップルの立ち位置こそが日本人の目指していたものであることにも気付いている。

日本人は、昔からこのような「こだわり」を自然と持ち合わせて来た。だからこそ日本では職人が大切にされて来たし、職人の生み出す製品の凄さを大切にしてきた。

しかし、グローバル化の時代になり、安物が席捲し、安物しか買わない時代がやってきている。多くの日本企業や日本人がそれに染まっていき、もはや「こだわり」をまったく持たない日本人も増えた。

そうは言っても、長らく日本人に染みついた「より良くしたい」「もっと良くしたい」という職人気質は、簡単に消えてなくなるようなものではない。

重要なことだが、日本人からはまだ職人魂は失われていない。多くの日本人は、今も極上の製品に対する渇望があり、それを評価する目がある。

日本人の凄みは、「こだわり」にある。「こだわり」が世界に受け入れられることはアップルが証明しているのだ。だからこそ、日本人は世界の誰よりもアップルに注目し、研究する必要があるはずだ。(written by 鈴木傾城)

このサイトは鈴木傾城が運営し、絶えず文章の修正・加筆・見直しをしています。ダークネスを他サイトへ無断転載する行為は固くお断りします。この記事の有料転載、もしくは記事のテーマに対する原稿依頼、その他の相談等はこちらにメールを下さい。

日本人の凄みは、「こだわり」にある。「こだわり」が世界に受け入れられることはアップルが証明しているのだ。だからこそ、日本人は世界の誰よりもアップルに注目し、研究する必要があるはずだ。

鈴木傾城のDarknessメルマガ編

CTA-IMAGE 有料メルマガ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」では、投資・経済・金融の話をより深く追求して書いています。弱肉強食の資本主義の中で、自分で自分を助けるための手法を考えていきたい方、鈴木傾城の文章を継続的に触れたい方は、どうぞご登録ください。

アメリカ企業カテゴリの最新記事