アップルは「今後もイノベーションを生み出せるか?」が問われている

アップルは「今後もイノベーションを生み出せるか?」が問われている

アップルはアメリカが誇る史上最強のハイテク企業である。2018年11月1日の第四四半期決算でも前年同期比20%増の好調な数字を発表している。しかし、アップルの決算後に株価は急落し、下落傾向は今も止まっていない。

なぜか。アップルの来期の見通しが弱気だったからだ。

「来期の見通しが弱気」というのは、アップルの業績を牽引しているiPhoneがこれまで通りのように「売れない」とアップル自身が考えていることを示している。

さらに、アップルは「2019年以降の決算では、これまでのように個別製品の販売台数を決算で発表しない」と述べた。

その理由についてアップルは「販売台数が業績を反映しなくなった」と言うのだが、これはつまるところ「もう販売台数を伸ばすのをあきらめた」と言っているのも同然だった。

来期は下がるというよりも、今後は「ずっと販売台数は下がり続ける」という意味合いがそこにある。こうしたアップルの将来の見通しの暗さを投資家は敏感に読み取った。アップルの急激な株価下落の要因はここにある。

来期の利益減少を、市場は織り込みにいっているのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

販売数よりも、一台で稼げる利益幅が重要になっていく

iPhoneの販売台数の減少は、アメリカと中国との貿易戦争のような外的要因のようなものもある。

しかし、それを抜きにしても、長らくアップルを使用しているユーザーにとって、「iPhoneが今までのように売れなくなる」「販売台数は下がる」というのは、それほど驚くほどの報告ではなかったのは事実だ。

アップルの利益の増大はiPhoneの販売数の拡大が生み出したというよりも、高級化路線が生み出しているものであるというのは、年々アップルに支払う金額が増大していくユーザー自身が切に感じていることだからだ。

アップルの製品は凄まじく質が良い。しかし、この高品質は価格に反映されている。アップルが製品を高額化すればするほど、そこから取り残されるユーザーが増えていくのも当然と言えば当然のことなのである。

格差が広がっていく社会では高額化を受け入れられる人は絞られる。

高級化路線は最終的に、ユーザーを増やすのではなく減らす結果をもたらす。その臨界点はどこにあるのか、アップルは毎年「上値」を試しているように見受けられた。そして、その結果として2018年で高級化路線がいよいよ臨界点に達したとアップルは判断したのだ。

iPhoneをもっと高品質・高級化することはできるが、高額となったiPhoneに飛びつける層は限られる。だから、販売台数は下がっていく。「販売台数が業績を反映しなくなった」というのはこれを語っている。

ここから先は販売数よりも、一台で稼げる利益幅が重要になっていく。アップルはそこに重点を置き出した。

実は、アップルは販売数を伸ばそうと思ったらいつでも伸ばすことができる。ただ単純に「機能を落とした安いiPhoneを販売すればいいだけ」だからだ。アップルはiPhone5Sのような名機をつい最近まで売っていたし、それはよく売れていた。

これに若干のブラッシュアップを加えて売り出せば、iPhoneの販売台数は凄まじく伸びていくことになる。しかし、アップルはそれを「あえて」選択しなかった。なぜなら、利益率が下がり、安物ブランドに堕すからだ。

アップルは高級機種の付加価値で利益率を上げ、高級路線でブランド力を付けることでさらに利益率を上げ、廉価版を切り捨てることでも利益率を上げ、ブランドで囲い込んだ客に高品質なサービスを提供して利益率を上げる経営に注力するようになったのだ。

アップルは高級化路線を突き進むことを決断して覚悟を決めた。

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アップルがイノベーションを失うと、退屈な世の中になる

アップルは「ブランド」を大切にする企業なので、こうしたアップルの目指す方向はそれほど奇異なものではない。むしろ、安物を大量生産して安売り合戦に巻き込まれる方がアップルらしくない。

ある意味、このアップルの動きは「いかにもアップルらしい」ものであると評価はできる。

スマートフォンの分野はイノベーションが出尽くして飽和しつつある。イノベーションが鈍化するのであれば業界は必ず「価格が勝負」に変質する。アップルは「安売り拡大路線」に向かうか「高級路線」に向かうか、ここ数年は岐路に立たされていたと言っても過言ではない。

そして、アップルは答えを出したのだ。アップルは「高級路線」を取った。

アンドロイドのスマートフォンはすでに価格で熾烈なバトルに入っているのだが、アップルはそれを拒絶した。アップルはイノベーションで生きている企業であり、安売りで生きている企業ではない。だから、明確に高級路線に転換したのだ。

今後、アップルはサービスで収益を上げるという予測もある。しかし、iPhoneの販売数が減少していくのであれば、サービスでの収益も減少するのが普通なので、それほどうまくいかない。

アップルがしなければならないのは、創始者スティーブ・ジョブズがパーソナル・コンピュータ分野を切り開き、スマートフォン分野を切り開いたように、新しい未知の分野を切り開いていくことであるのは間違いない。

アップルが力を入れているiPadがそれになるのか、それともまだ誰も想像もしていない新たな分野が生まれるのか、私たちにはまったく分からない。分からないが、その「分からないところ」にアップルの命運が託されている。

ひとことで言うと「アップルは今後もイノベーションを生み出せるか?」が株式市場で問われている。

「アップルはまだまだイノベーションが生み出せる企業だ」と考える投資家にとってはアップルの株式の下落は買いになるし、「アップルにはもうジョブズもおらず、イノベーションを生み出せないだろう」と考える投資家にとってはアップルの株式は売りになる。

今の市場は、そのせめぎ合いで揺れているのだ。

私自身は、ハイテク分野とハイテク企業は文明の中心的な核(コア)になるというのは確信を持っているので、ハイテク企業がたっぷりと含まれたETFを保有する方向は揺るがない。

しかし、アップルの株式をポートフォリオの主軸に据えることはない。アップルだけに限らず、ハイテク産業のどの個別株にも投資しない。イノベーションとパラダイムシフトが強烈な業界は企業の生存競争も厳しい世界だからだ。

ただ、願わくばアップルが10年後も20年後もそのブランドで輝き続ける企業であって欲しいと個人的には思っている。私はアップルの株主ではなく、アップルのユーザーだからだ。初期のMacintoshからずっとアップルを使ってきた。

アップルがイノベーションを失うと、退屈な世の中になる。そんな世の中になって欲しくないから、アップルにはイノベーションの険しい道を切り開いて欲しい。(written by 鈴木傾城)

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「アップルはまだまだイノベーションが生み出せる企業だ」と考える投資家にとってはアップルの株式の下落は買いになるし、「アップルにはもうジョブズもおらず、イノベーションを生み出せないだろう」と考える投資家にとってはアップルの株式は売りになる。

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