一気に儲かるのが良いのか、長期で確実に資産が増える方が良いのか?

一気に儲かるのが良いのか、長期で確実に資産が増える方が良いのか?

人間でも動物でも、ありとあらゆる生物は、赤ん坊が子供になって大人になって老いていく過程から逃れられない。

赤ん坊から子供へ、子供から大人への過程で、生物はどんどん成長していくのだが、ある程度まで成長したら、すべての生物はどこかの時点で成長が止まる。

至極当たり前の話なのだが、「永遠に成長し続ける存在はない」というのは森羅万象の現象である。

興味深いことに、これは企業にも当てはまる。企業は動物と違って寿命が明確にあるわけではなく、事業が続いている限りは100年でも200年でも、いやそれ以上でもずっと継続することができる。

日本は老舗企業が多い国として知られていて、「全国老舗企業調査」では2017年に創業100年以上となった企業は、全国で3万3069社あると記している。最も古い企業は飛鳥時代に設立された「金剛組」で578年も事業が継続している。

しかし、凄まじいまでの長寿を誇る企業も、成長に成長を重ねて世界が征服できるほど巨大化しているわけではない。ある規模で成長が止まって成熟すると、後は一進一退を繰り返しながら事業が継続している状態に入る。

そう考えると「成長」と「継続」はまた違う種類のものであると分かる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

成熟企業の株価は「テコでも動かない」のが普通だ

成長段階と継続段階のどちらが短くてどちらが長いのかと言えば、当然のことながら継続段階の方だ。

成長は初期のある一時期に過ぎず、その爆発的な成長が頭打ちになると事業規模はそこから巨大化しなくなり、横ばいがずっと続いていく。どれくらいの横ばいが続くのかは事業分野や経営効率によって違うのだが、いずれにせよ生まれたものは成熟するとそれ以上は巨大化できなくなる。

かつて、世界を征服したと言われた企業があった。ジョン・D・ロックフェラーが率いるスタンダード石油だ。

石油の世紀に入って、他社を巧みに買収していくスタンダード石油は、やがては全世界を飲み込むのではないかと恐れられ、「大蛇(アナコンダ)」と言われて嫌われる時代もあった。

しかし、この巨大化した企業も独占禁止法によって分割され、成熟期を迎え、やがて石油業界は低成長が延々と続く「オールド産業」に分類されることになった。

もっとも、オールド産業ではあったとしても、石油は文明の血液にあたるものであり、石油を扱う企業は世の中から消えることはない。

市況によって利益は暴騰と暴落を繰り返しながらも石油企業は生き残り続け、そのために株価が低迷すればするほど配当率が上がり投資家を潤している。石油会社は長期投資家には実に好ましい投資対象でもある。

ただし、成熟企業に投資する長期投資家が報われるのは、「長期間保有し続けられる投資家だけ」ということに気づく必要がある。

数年で出入りする投資家は何も得られない。それは成熟企業の特質を見れば分かる。成熟企業は延々と事業は継続するが、爆発的に成長することはないので、株価はまるで死んだように横ばいを続けるからだ。

成長株がどんどん株価を上げていくのに、成熟企業の株価は「テコでも動かない」のが普通だ。

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成長する企業に全財産を突っ込めばいいのか?

成長段階の企業の株は、動物の子供のようにどんどん身体を大きくして株価も伸びる。そうであれば、成熟企業に投資するのはやめて成長する企業に全財産を突っ込めばいいのではないか、という考える人は多い。実のところ投資家の80%や90%はそのように考える。

しかし、ここにはワナがある。

投資家がどこに群がっているのか、最もよく分かる指標はPER(株価収益率)である。PERは「株価÷一株当たり利益(EPS)」、もしくは「時価総額÷純利益」で示される指標だ。

「PERが高い」というのは投資家が買い漁っているということである。企業が生み出す利益と株価を比較すると、投資家が殺到して買いまくっている企業ほどPERの値は増えていく。

たとえば、成熟企業はPER10倍あたりで推移していることは珍しくない。一方の成長企業はPER30倍〜40倍は当たり前で、中には100倍を超える企業さえもある。

成長企業の代表で投資家が我を競って買いまくっているアマゾンのPERは現在「257.56倍」である。実は、アマゾンは設備投資を意図的に過大にして利益を出さない経営をしているのでこんなことになっているのだが、それにしても257.56倍は驚くべき数字でもある。

投資家が成長株に殺到しているということは何を意味するのか。

それは、利益に対して株価はすでに高値に舞い上がっているということである。投資家は人気がある分だけ、高い値段を支払わないとそれが手に入らないのである。

高い値段で買っても、どんどん成長していくのであれば誰も文句はない。しかし、物事はそんなうまくいかない。成長するものは、どこかで成長が頭打ちになる。いつか「必ず」成長できない時が来るのである。

もっと成長すると思って人々は買っているのに、もう成長しないと悟ったら株価のうなぎ登りの上昇はないので一気に人気が離散する。そうなると人々は株式を手放し始めて株価は暴落していくことになる。

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長期投資の長期とは、いったいどれくらいの期間なのか?

成長株への投資は分かりやすく華々しい。

しかし、人々が殺到するがゆえに常に高い価格で買わされることになり、少しでも成長が鈍化したら売り飛ばされてしまい、取り残されたら大損することになる。つまり、成長株への投資は高値をつかまされやすい投資なのである。

もうひとつ成長株にリスクがあるとすれば、成長株は「死にやすい」という点もあげられる。赤ん坊が死にやすいのと同様に、会社も若ければ若いほど死にやすい。

老舗企業はそれ以上は強大に成長しない代わりに、事業を継続させるノウハウや信用や資産を持っているので延々と生き残るのだが、若い企業はそのいずれかが圧倒的に足りないので事業継続が困難になることも多い。

だから、成熟した企業が成長しないからと言って、成長途中のホットな企業に買い向かっても絶対に成功するとは限らない。事業は頓挫して株価は壮絶に吹き飛んでしまうこともあれば、意外に早く頭打ちになって縮小していくだけということにもなる。

その点、爆発的な成長はないが着実に利益を出して生き残っている企業に投資するのは安定性が高くリスクも低く、将来予想もしやすいメリットがある。PERも低いので配当率も高い。

しかし、安定した企業への投資で「一気に資産を増やす」のは、大暴落時に一気に買わない限りは不可能に近い。安定しているのだが、ぼろ儲けの機会はほとんどない。

長期投資とは、十年一日のごとく同じ銘柄を保有し、配当を何年も何年も地道に積み上げて十数年後あたりにやっと資産の増大が感じられるような、そんな投資である。

コロンビア大学の教授ジェレミー・シーゲル氏は著書『株式投資: 長期投資で成功するための完全ガイド』において長期投資とは何年なのかを記している。長期投資の長期とは「20年」である。

優良企業の株式を長期で保有する、あるいは全市場型のインデックス・ファンドを買って長期で保有するという投資は「20年」という年月を見なければならないのだ。この20年というのは決して短い期間ではない。

リスクを減らして確実に資産を増やすために20年かかっても良いと思えるか、それともリスクは高く損失も出るかもしれないが一気に儲けられる方が良いと思うか、それは人それぞれだ。

あなたは、どちらのタイプだろうか?(written by 鈴木傾城)

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