アメリカの株式市場の高値の裏側で、投資哲学が試される局面になる

アメリカの株式市場の高値の裏側で、投資哲学が試される局面になる

新興国の経済状況は悪化し続けている。トルコから始まり、アルゼンチンから南アフリカまで「連鎖」している。(ダークネス:世界に注視すべきだ。世界経済の不安定化がじわじわと迫っている

アメリカと中国の貿易戦争もエスカレートすることが予測されているのだが、ドナルド・トランプ大統領はEUとも貿易戦争を拡大しようと画策している。

グローバル経済は決して順調ではない。

しかしアメリカ経済は底堅く推移している。ダウジョーンズ・インデックスが算出しているアメリカの代表的な株価指数であるS&P500を見ても高値圏にあるのが分かる。アメリカ経済は強い状態にある。

このままアメリカの株式市場は高値圏を維持し、さらに上がっていくのだろうか。

その答えは「誰にもわからない」というのが真実だ。アメリカ経済はさらに力強く成長して人々を驚かせるかもしれないし、もしかしたら大きな崩落がくるかもしれない。

予測するのは勝手だが、現実は常に予想を裏切る結果になるので当たっても外れても意味がない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

アメリカの株式市場が高値圏に張り付いている

ただ、高値で人々が舞い上がっているときには、慎重にならなければいけないのは世の常だ。強気が増えれば増えるほど、何かおかしいという雰囲気を感じなければならない。

ブルームバーグは最近『米国株の下落に備えよ-ゴールドマンとシティが警戒促す』というタイトルで、シティグループのトビアス・レブコビッチ氏の言葉をこのように伝えている。

『賃金上昇ペース加速の可能性に加え、米金融政策や地政学事象、貿易制裁、海外経済の軟調なども相まって、5%下がるような下落局面が再び起こる可能性がある』

ゴールドマン・サックスのステラジストも『S&P500種株価指数が年19%上昇した9年半を経て、今後数年はリターンが低下することに投資家は備えるべき』と、弱気に転じている。

グローバル経済が新興国を中心に動揺しつつあるので、本来は投資家の恐怖や疑心暗鬼はもっと膨れ上がって株価が下落してもいい局面である。にも関わらず、アメリカの株式市場は高値圏に張り付いて下落しない。

このことに、疑問を抱くようになっている関係者が増えつつあるというのが現状だ。

ウォーレン・バフェットは最近はアップルに大きな投資をしているのだが、それでも2017年から積み上がる現金の使い道に苦慮しており、大型買収はまったく行っていない。

バフェットの経営するバークシャー・ハサウェイは、普通株の購入と共に永続的な利益を生み出す企業を丸ごと買収する手法を多用しているのだが、最近は「株式投資は企業買収よりは割安」として大型買収は行っていない。

そのため、バフェットは「やや割高である」ということを承知した上で自社株買いを行っているのだが、これに対しては「バフェットは投資する企業を見つけることもできないのか?」という批判も上がっている。

そうなのだ。「見つけることができない」のである。市場が好調だと買収先の企業の多くは過大なプレミアムを乗せて強気の交渉をするからだ。

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アメリカ株式市場の絶好調には落とし穴がある

稀代の投資家であるウォーレン・バフェットと言えば、アメリカの株式市場が高いか低いかをざっくりと見るための「バフェット指数」というものを考案していることでも知られている。公式は以下のものだ。

「株式市場の時価総額÷アメリカGDP×100」

この指数は100を超えると割高であると見なされるのだが、実を言うとアメリカの株式市場は2013年からずっと100超えが続いている。現在は148.09ポイントなので、5年に渡ってアメリカの株式市場は「割高」であると見ることができる。

ただ、この「割高」には落とし穴がある。

その落とし穴というのは、「アメリカの株式市場の高値圏は、実は少数の銘柄が高値に押し上げているだけ」というものだ。この少数の銘柄というのは何か。それがハイテク業界のビッグ5である。以下のものだ。

・アップル
・マイクロソフト
・アマゾン
・グーグル
・フェイスブック

最近、アップルとアマゾンが相次いで時価総額1兆ドル企業に達している。

言うまでもなく、これらの企業はインターネットに最も最適化された企業であり、インターネット至上主義の社会で大きな恩恵を受ける企業だからだ。

人々はこれらのハイテク企業の魅力にとらわれてぞっこんになっている。実際、これらの企業が生み出す収益は凄まじいものがあるのも間違いない。

そのため、多くの人々がこぞってアップルとアマゾンに殺到した結果、これらの企業を1兆ドル企業に押し上げたばかりか、アメリカの株式市場全体を高値圏に押し上げているのだ。

アメリカの株式市場は絶好調なのだが、仔細に見るとすべてが好調というわけではなく、モンスター級の「ビッグ5」とそれに続くハイテク企業のみが絶好調で、後は大したことがないというのが見えてくる。

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高値をつかみに行くか、暴落してから買うか?

今後のインターネット至上主義社会の中で、ハイテク産業が大きな役割を示すのは間違いない。そのため、誰も彼もがハイテク産業に殺到している。

実はハイテク企業の株式を手に入れておくのは、明らかに正しいことである。

なぜなら、ありとあらゆるビジネスモデルがすべてインターネットに集約されていく中で、ハイテク産業の重要性が増すのはむしろ「これから」だからだ。

ハイテク産業は利益を生み出し続ける産業である。これからも数多くのイノベーションが待ち受けている。

ただし、ハイテク産業は常に人々を惹きつけている業種である以上、いったん火がつくと急激に高値圏に舞い上がって降りてこない。

1990年代の後半にITバブルが起きて2000年代に崩壊した経緯があるのだが、2010年代のスマートフォン時代に入ってからハイテク産業の成長はいよいよ本物になって人々が殺到するようになっている。

この高値圏がいつまで続くのか、どこまで続くのかは分からない。いや、「高値圏」とは言いつつも、本当は山の中腹でしかないかもしれない。

そのために、目をつぶって高値をつかみにいくのが正しいのか、それとも静観した方が正しいのか、誰もが判断に迷うはずだ。正解は「分からない」のだから、自分の金を賭けて運を試すしかない。

ただ、覚悟しておかなければならないのは、もし状況が悪化して株式市場が見直される局面がきたとき、真っ先に売られるのは常に高値圏に張り付いている銘柄であるということだ。

つまり、何らかの理由で問題が発生したら、高く舞い上がっていたビッグ5とその後を追っているハイテク企業の株価が真っ先に崩落していく。

それを覚悟して高値をつかみに行くか、それとも高値で買っている人を尻目にしぶとく待って、阿鼻叫喚の地獄にあるときに拾いにいくか、それはその人の投資哲学や人生哲学に委ねられることになる。

そのような状況が今のアメリカの株式市場であると考えると、なかなか興味深い局面に来ていると言えるはずだ。あなたは、どちらを選ぶだろうか。(written by 鈴木傾城)

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