国も銀行も個人も、三者まとめて「マネー」で苦しむ時代に入る理由

国も銀行も個人も、三者まとめて「マネー」で苦しむ時代に入る理由

日本の普通預金金利は、大手都市銀行である三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行、りそな銀行のどれを見ても0.01%である。100万円預けて年に100円しかつかない。

一方でATMで無料時間外に利用すると、100円から200円近くを「手数料」として取られることになる。振り込み手数料も、金額によって200円から400円、場合によっては600円から800円以上を取ることもある。

1回、銀行のサービスを下手に利用すると金利など瞬くの間に吹き飛んでいくのだ。自分の金を出し入れするだけで、実質的に目減りしてしまうのが日本の銀行の現状だ。

こんな状況であっても「銀行は信頼できるからこれでいい」と言っている人がいるのだから日本人は無邪気な人が多い。

他国であれば、「いったいこの金利は何だ」とデモや暴動が起きるし、国会でも「なぜ、金利がこんなに低いのだ」と追及される。しかし日本では、そのような動きはまったくない。

さらに「もう銀行には付き合いきれない」と吐き捨てて、投資を検討する人もほとんど出てこない。

日本人の約8割は株式投資をしたこともないし、稀に株式投資をする人がいると思ったら売ったり買ったりするトレーダーであり、投資家ではない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

「日本人ほど現金が好きな国民はいない」は本当か

日本人の貯金好きは世界でも筋金入りだ。それは、個人金融資産に占める「現金・預金」の比率を見ても分かる。2017年9月時点で「現金・預金」の比率は「51.1%」である。

アメリカは13.7%、イギリスは24.4%であることから見ても、日本における「現金・預金」の比率は異様なまでに高いことが分かるはずだ。

このように見ると、外国人のアナリストは「日本人ほど現金が好きな国民はいない」と考えるのかもしれないが、実のところそれは半分当たっていて半分外れている分析だ。

日本人が現金に絶対的価値を置いているのは、これだけ世界中でキャッシュレスが進み電子決済が当たり前になってきているのに、日本人だけは現金での決済に固執して時代遅れになってしまっているのを見ても分かる。

アジア圏ではQRコード決済が爆発的に広がっており、中国企業が決済システムを制する勢いになっていて、大きな懸念が発生しているのはこちらでも書いた。(マネーボイス:中国政府に見られてるぞ。日本人が知らない「QRコード決済」の闇=鈴木傾城

今、アジアでは決済システムを巡って「覇権争い」が起きているのだが、日本人は現金主義にこだわっているので次世代の決済はすべて「外国に持っていかれてしまう」のは確実な状況になっている。

そんな状況だから「そんなに日本人は現金が好きなのか」と思われても仕方がない。

しかし、本当のところを言えば「日本人はマネー(経済・金融・金利・投資)そのものに強い関心がなく、マネーそのものに強い執着心すらもないのではないか……。

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マネーそのものに強い関心も強烈な執着心がない?

資本主義の世の中なので、誰もが金の大切さは知っている。日本人も、もちろん金のために生きているのは間違いない。

しかし日本人は、どこかの民族のように「金を増やしたい、金が欲しい、金を手に入れたい」と一日24時間、朝から晩までずっと金のことを考えて生きている人はかなり少ない。

金の話をする人もあまりいないし、1円でも給料が安いと不平不満を漏らして会社を激しく恨んだり辞めたりする人も稀だ。

中国では今より少しでも給料が高いところがあると、何の躊躇もなく会社を移るし、会社で働きながらも副業を2つも3つも持ったり、賄賂をせっせと集めたりする。

合法非合法問わず「金のためにできること」なら何でもやる。誰も自分に高給を払ってくれないのであれば、裸一貫であっても起業する。

日本人はそのような精神性を持ち合わせず、給料が安くても文句も言わずに働く。会社に尽くし、サービス残業もする。別の言い方をすれば、日本人は給料以上の働きをする。

よくよく考えると、これは日本人にマネー(経済・金融・金利・投資)そのものに強い関心がないことを意味している。

低金利なのに国外に資金が流出しない、銀行に現金を預けっぱなし、安い給料でもおいそれと会社を移らない、賄賂も不正もすることはない。「カネ、カネ、カネ」という金の亡者のようにならない。

まさにマネーそのものに強い関心も強烈な執着心もないからこそ、このような世界になっているのではないだろうか。

日本の財政赤字や酷税や止められない社会保障の増大は、他国ではとっくに破綻を招いている状況だ。そもそも、金利が0.01%の時点で他国では取り付け騒ぎが起きて、すべての銀行が倒産している。

日本は国民気質としてマネー(経済・金融・金利・投資)そのものに強い関心がなく、だから銀行がかろうじて助かっており、さらに国が滞りなく運営できている。

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国も銀行も個人も、三者まとめて「マネー」で苦しむ

皮肉なことに、日本人にはマネーの関心度が低い。そのせいで金融リテラシーも低い。だから金利計算もしないで金を銀行に預けっぱなしにしており、それで銀行も国も助かって社会不安が起きないでいる。

つまり、日本という国は「国民に金融リテラシーがないから助かっている」だけであって政治家や日銀が偉いから助かっているのではないということを知る必要がある。

下手に日本人が金融リテラシーに目覚めると危険なのだ。

日本人全員が「なんだ、0.01%という馬鹿げた金利は。引き出してアメリカの株式に投資してやる」みたいな話になると、その瞬間に日本という国は銀行・政府もろとも崩壊することになる。

そのため、政府も日銀も銀行も、「国民がマネーに目覚めたらマズイ」という共通した意識があるはずだ。

ただ、今のままでは莫大な金が銀行にストックされて経済が回らないので、国は何とかその一部を動かして投資に回させようとしている。

しかし、全国民が投資に目覚めて銀行から金を引き出すようなことになるとそれはそれで「もっとマズイ」ので、貯蓄から投資へという掛け声はほぼ中途半端で終わってしまっている。

このまま国がうまく回っているのであれば、下手に日本人をマネーに目覚めさせなくても今のままでいいのではないかという現状維持の発想もある。

しかし、この現状維持は長く続かない。

なぜなら、日本人は人口を急激に減らしていく極度の高齢化社会に入り込んでおり、日本の国債の事実上の担保になっている貯金は取り崩されていくばかりになるからだ。

高齢化が進めば進むほど、日本の貯蓄率も貯蓄額も下がっていき、銀行も国もジリ貧になっていく。税金は今よりもさらに上がり、新たに貯蓄税だとか資産税のようなものも取り入れられることになる。

2020年で日本は「女性の半数が50歳超え」となり、2024年には「全国民の3人に1人が65歳以上」になる国だ。このまま放置していると、国も、銀行も、個人も、これからは三者ともに「マネー」で苦しむ時代になってしまう。(written by 鈴木傾城)

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2020年で日本は「女性の半数が50歳超え」となり、2024年には「全国民の3人に1人が65歳以上」になる国だ。このまま放置していると、国も、銀行も、個人も、これからは三者ともに「マネー」で苦しむ時代になってしまう。

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