株を安く買って高く売るものであると考えていると「出口戦略」が必要になる。出口戦略というのは「いつ売るか?」という部分を指す。
もし、アメリカの高配当優良企業に投資しているのであれば、実のところ「出口戦略」はまったく必要ない。なぜなら、こうした企業の株式は安定的に配当が入り、さらに配当額は増えていくことが確約されているからだ。
アメリカには30年以上に渡って連続配当しているどころか、30年以上に渡って連続「増配」をしている企業ですら、山ほど存在する。
こうした企業の株式を長く保有して再投資していれば、市場が低迷しているときは株数を多く増やせる上に、増えた株数が増額していくので後半になればなるほど資産の膨らみは加速していく。
つまり、こうした優良な企業の株式を保有していれば、出口戦略はまったく必要ないということになる。なぜ、3ヶ月に一度は金の卵(配当)を生んでくれるニワトリを他人に売らなければならないのか、ということだ。
こうした配当のことを「インカムゲイン」と呼ぶ。株価の変動による利益は「キャピタルゲイン」と呼ぶ。インカムゲインが素晴らしいのは、それが定期的・継続的・計画的に入ってくることだ。
まるで会社にでも勤めて給料をもらっているかのように、一定額が約束通り口座に振り込まれる。一定の金額がきちんと振り込まれるというのは、ほとんどの人にとって大きな精神安定剤となる。
キャピタルゲインは、いつどこでどれだけの金額が手に入るのか分からない。さらに言えば、株価の上げ下げについては「絶対に利益が取れる」とも限らない。キャピタルゲインはとても不安定なものである。
しかし、決まった月に一定額が必ず振り込まれるインカムゲインは確実な利益であり、とても安定的なものである。
だから、優良な企業の株式を、ほどほどに安いと思ったときに大量に保有して、あとは配当再投資をきちんと行っていれば、いつしかそれは売る必要のない「金の卵を生むニワトリ」と化す。
世の中がどんなに変調をきたしても、さらに時代がどんなに変わってもインカムゲインを生み出し続ける株式を保有していれば、「悪いことにならない」というのは誰でも分かるはずだ。
これは、とても単純な理屈だ。
弱肉強食の資本主義の世界では、こうしたものを手に入れて自分を助ければいいということになる。
ちなみに、日本では「金の卵を生むニワトリ」と言うが、欧米ではこれを「金の卵を生むガチョウ」と言う。イソップ寓話の
The goose and the golden egg
から来ている。この寓話のあらすじはウィキペディアにうまくまとまっているので紹介したい。
ガチョウと黄金の卵
ある日農夫は飼っているガチョウが黄金の卵を産んでいるのを見つけて驚く。それからもガチョウは1日に1個ずつ黄金の卵を産み、卵を売った農夫は金持ちになった。しかし農夫は1日1個しか卵を産まないガチョウに物足りなさを感じ、きっとガチョウの腹の中には金塊が詰まっているに違いないと考えるようになる。そして欲を出した農夫はガチョウの腹を切り裂いた。ところが腹の中に金塊などなく、その上ガチョウまで死なせてしまった。(ウィキペディアより)
優良企業の株式を売り飛ばすというのは、要するにガチョウの腹を切り裂くも同然なのだ。馬鹿げているとういことだ。