世界有数の金持ちカルロス・スリムが、1982年にやったこと

世界有数の金持ちカルロス・スリムが、1982年にやったこと

歴代の「世界ナンバーワンの億万長者」は1995年から2007年までずっとビル・ゲイツだった。

2008年には投資家のウォーレン・バフェットがナンバーワンとなったのだが、次の2009年には再びビル・ゲイツが世界ナンバーワンとなった。

しかし、2010年から2013年までの4年間、世界最大の資産家はメキシコのカルロス・スリム・ヘルという人物であった。

ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットはよく知られているのだが、カルロス・スリムはあまり日本人には知られていない。

メキシコ生まれの実業家だが、実際には実業家というよりも投資家としての側面が強い。

10代の頃から投資をはじめて20代の頃には億万長者になっていたという人だが、その大金はメキシコの株式市場で得たものである。

カルロス・スリムが大富豪になるきっかけは、1982年にメキシコが経済危機に瀕した最悪の時期に全財産を賭けて株式を買ったことだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

破綻の坂を転がり落ちていったメキシコ

1982年。石油に依存したメキシコ経済は累積債務がかさんで国家破綻寸前にまで転がり落ち、国債信用力も地に落ちて通貨は下落していた。

この経済危機のさなかにデ・ラ・マドリー大統領が就任してIMF(国際通貨基金)に支援を求めることになった。

IMFはメキシコに乗り込んで行ったが、やり方は例によって非情だった。徹底した緊縮財政を強要して、メキシコのペソも切り下げたのである。

国が破綻寸前にまで追い込まれて通貨が信用をなくし、しかも切り下げまで行われたというのは、つまり国民の預金が一気に価値をなくしてしまうということである。

その結果、国民は一気に貧困のどん底に突き落とされてメキシコは阿鼻叫喚の地獄に包まれた。

数年経ってもメキシコ経済は低迷したままで、1986年には債務がさらに膨れ上がって1,000億ドルを超える事態にも陥った。

結局、メキシコ経済が好転していくが、それは石油価格が上昇して外貨が稼げるようになったからである。

IMFの指導は関係がなかったし、政府の指導力が効力を発揮したというわけでもなかった。単に市場環境が好転して、メキシコは息をつくことができただけだった。

経済的な政府の無策や汚職はその後も続いたので、こういった弱点を見透かされて1994年にはヘッジファンドに狙われてメキシコ発の通貨危機、いわゆるテキーラ・ショックさえも起きている。

メキシコはお世辞にも投資環境が素晴らしい国とは言い難いところだったのである。

ところが、そのメキシコが史上最悪の国難にさらされているその時に、カルロス・スリムはチャンスをつかんでいた。

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捨て値同然の価格で買い集めたカルロス・スリム

カルロス・スリムはその時、何をしていたのか。

1982年、メキシコが債務危機に陥って、メキシコを代表する企業が次々と破綻の危機に追いやられていった時、間違いなくメキシコは国として「終わっていた」状態だった。

メキシコ・ペソは切り下げられて、もはやメキシコには将来がないと多くの資産家が国外に逃げて行った。

そのとき、カルロス・スリムは国営化されるという噂のあった大企業の株を「捨て値同然の価格で買い集めていた」のである。

まさに、究極の逆張りだ。

もちろん、これは大きな「賭け」であり、また長期戦でもあった。何しろ国の将来は真っ暗闇、好転する兆しもなく、100人に聞けば100人ともメキシコは「もう駄目だ」と言っていた時だ。

企業は次々と潰れていき、金持ちはアメリカに逃げていく。貧困層が街に溢れ、株式市場は壊滅的な大暴落に陥ってしまっている。

そんなときに株を買い集められる人は少ないし、ましてや明日にでも破綻するかもしれないような会社に全財産をつぎ込める胆力を持った人もいない。

しかし、カルロス・スリムはそれをやった。一世一代の大勝負に出て、しかも結果が出るまで何年も何十年も長期投資(バイ・アンド・ホールド)してきている。

ボロボロになった国の、国有化寸前にまで追い込まれた会社の株式を不屈の意思で持ち続けることができる人もそういないはずだ。

カルロス・スリムはそれをやった。だから、メキシコがようやく立ち直ったとき、底値で買った株を持っていたカルロス・スリムが、メキシコはおろか、世界でも有数の資産家になっていったのである。

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株式は紙幣に勝り、優秀な企業は政府に勝る

投資家はここで「なるほど逆張りで金持ちになれるのか」と考えるのだろうが、一般人の教訓はそうではない。

国家を信用して貯金をしていても助からないが、適切な企業の株式を適切な価格で買って保持しておけば、短期の浮き沈みがあったとしても、最終的には助かるということだ。

カルロス・スリムは優秀な投資家だったので、「勝負」と「賭け」に出た。金持ちになるにはそういった大きな賭け、大きな勝負が必要になって来るのだろう。

しかし、一般人はそんなことをしなくてもいい。

ただ単に、利益を出し続ける優秀なビジネスを持つ企業の株式をそれなりの価格で保持しておけば、それだけで政府を信頼するよりも報われる。

株式は紙幣に勝り、優秀な企業は政府に勝る。それが、1982年におけるカルロス・スリムの教訓なのである。

政府が累積債務を積み上げている時、政府は信用してはいけない。むしろ、全力で預貯金をどこかに逃さなければならない。どこに逃がすのか。

現物資産か、外貨か、株式か、不動産である。

多くの国の政府は財政赤字を積み上げていて、歳入よりも歳出のほうが多い国家運営になっている。そして、それを赤字国債の発行で賄っている。日本もまたそうした国のひとつである。

政治家は私利私欲を肥やしたり国家財政を浪費するのは得意だが、財政を緊縮したり財政赤字を削減するのは得意ではない。

だから、国家財政は常に火の車であり、紙幣はインフレに見舞われる運命を避けられない。いつ、どれくらいの規模のインフレになるのかは分からないが、紙幣は常に信用できない財産なのである。

そんなことは誰にも分かっているので、それで誰もが馬鹿な国家のとばっちりを受けたくないと考えている。

現物資産か、外貨か、株式か、不動産か。

1982年、カルロス・スリムは迷うことなく「株式」を選び、そして最終的にはそれが功を奏した。何もしないで「紙幣」を抱いていた一般人は破綻した。(written by 鈴木傾城)

 

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メキシコのカルロス・スリム氏。現在も世界有数の富裕層である。大富豪になるきっかけは、1982年にメキシコが経済危機に瀕した最悪の時期に全財産を賭けて株式を買ったことだった。究極の逆張りで巨大資産を手に入れた。

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